夕餉の月 六日(晴れ)
夕餉の月 六日(晴れ)
着々と進めていた準備が、ようやく実を結ぶ。
流行るかどうかは置いておいて、お店を持つ願いがようやく叶う。
一通り必要なものは揃った。まだ薬の在庫問題や、ガタガタな棚や軋む床もそのままで、不安はたくさんある。でも、私の気分一つで開店できるだけの状況にはできた。
やろうと思えば、明日からでもお店を開けられる。
でももう少しだけ待とうと思う。二日後の私の誕生日から始めるのだ。
それまでになるべく良い状態に持っていこう。売れる物がなければ話にならない。同じ薬でも違う瓶に入れて、強引に種類を増やしてもいい。
今日はそれをやった。
市場で新しい瓶を用意して、ただの傷薬を豪華に見せた。
寸胴の瓶はガラス製の蓋で見栄えがよかった。意外と安価だったので、今後はこの瓶を主に使ってもいいと考えている。まとめ買いをすれば、今まで使っていた瓶とほぼ同額くらいになる。この辺りではガラスの生産が盛んなのかもしれない。
その新しい瓶に傷薬を注いだ。底に細いリボンをまわして蓋の上で結び目を作る。こうでもしないと蓋がすぐに外れてしまう。
見た目はとても綺麗。ただ、リボンは余計だったかもしれない。可愛いと思うけれど、値段相応かと問われると難しい。ただの紐ならもっと安く済む。
今後、高価な薬を扱うなら、高い瓶に高いリボンを括り付けてもいい。でもただの傷薬にする包装ではない気がするのだ。
普通の傷薬を綺麗に見せるのは今回限りにする。もし今後、リボンが安く手に入るなら、その限りではないけれど。