星羅の月 二十六日(曇り)
星羅の月 二十六日(曇り)
空模様は、昨日よりはよかった。でもまだ雲が溢れている。雨の心配はいらない。
昨日、出会った小動物だけど、朝起きたら横に居た。くるっと身体を丸めて、尻尾で身体を包むようにしていた。
たった一度だけ、食べ物を分けただけなのに、こうも懐かれるとは思わなかった。
可愛い動物だけど、飼うのは難しい。だから以降は一切、餌も何もあげないと堅く誓った。食べ物を与えなければ、勝手に離れていくはずと見越して……。
それでも付いてきた。
道すがら、虫や雑草をはみながら、ずっとこっちを見上げていた。あの丸い目は可愛かった。
無理をすれば、お店でも飼える。ケージに入れて薬からは遠ざける必要はあるけど、不可能ではない。外で飼う方法もあるはずだ。
それでもやっぱり、お店には置きたくない。イメージを損なうかもしれない。
飼うとしたら、狭い自宅になる。でも、そっちはそっちで難しい。自室は片付けが終わってないからケージの置き場所がないのだ。それに、まずケージがない。
今日中にサンクシエカに着けるかもと思っていたけれど、着けなかった。後ろからついてくる小さな同行者が気になっていたのか、歩く速度が遅くなっていたみたいだ。護衛として同行してくれている、エノコアさんへの支払いが増えてしまうけど仕方がない。
明日のお昼前には、サンクシエカの街に着くはずだ。それまでに、この小さな動物を飼うかどうか、決めなければいけない。
ちなみに、エノコアさんは街の外に出ることが多いので、飼えないそうだ。