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星羅の月 二十五日(曇り)
星羅の月 二十五日(曇り)
空が暗くて、少し心配になる一日だった。草原には屋根らしい屋根がないから、雨に降られると厄介だ。降らずに済んでよかった。
今日は面白いものをみつけた。小さな動物だ。この動物も私は初めて見る動物だった。エノコアさんも知らないそうだ。
短い四本の足で、長い尻尾がある。白い体毛のはずだと思うけど、泥で汚れて茶色かった。青い瞳が丸っこくて、胴がボールを潰したみたいな形をしていた。
その子が草陰から出てきたのは、昼頃だった。ちょうど食事時。
欲しそうに見上げられたから、野菜の欠片をあげた。愛くるしい仕草でがりがりやっていた。
その子が一日中付いてきた。今もすぐ横にいる。餌をあげて懐かれたみたいだ。
明日もついてくるつもりだろうか。飼うのはちょっと難しい。薬屋には置きにくいし。
朝になったら居なくなっているかもしれないし、朝になってから考えよう。
幸い、行程は芳しい。もしかしたら明日にはサンクシエカに戻れるかもしれない。少しくらいなら関係ないことに使える時間がある。