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星羅の月 二十三日(晴れ)

星羅の月 二十三日(晴れ)


なかった。なかったんだ。


今日、朝歩いてすぐ、目的の橙の沈む丘に到着した。そこまではよかったんだ。本当によかった。

しかしまあ、そこから先が問題で、――なかったんだ。天使の毛髪が見当たらなかった。


違う場所に来てしまったのかとも思った。しかし、天使の毛髪がない以外は、橙の沈む丘そのものだった。集めた情報通りの場所だった。三角の湖があるし、湖の近くに林もあった。とても静かで、綺麗な場所だった。


天使の毛髪は草だ。黄色オウジロという花の茎を割ると、白い糸状のものが採取できる。それが天使の毛髪だ。

その黄色オウジロが見当たらなかった。今でも、ないはずがないと思うのだ。黄色オウジロには猛毒がある。耐性を持つ動物は稀だから、食い荒らされるなんて基本的にはない。


私みたいに黄色オウジロを狙う人間が取り尽くしたかもと考えたけど、どうやらそれもなさそうだった。地面がどこを見ても自然だった。綺麗な地面なのに、芽すら見当たらない。


私が最後に疑ったのは、そもそも橙の沈む丘にはじめから黄色オウジロはない線だ。つまり情報が間違っている。この疑いを、今は結論としている。これが一番納得できた。


急ぎすぎたのが、良くなかったに違いない。おかげで何日も失ってしまった。もっとしっかり調べないと今日みたいになってしまう。教訓だ。


でも、無駄な旅ではない。天使の毛髪がないだけで、他のいい材料が沢山あった。たくさん有用な材料を集められたし、何よりも、橙の沈む丘がとても美しい場所だった。そのおかげで、湖畔でとったお昼ご飯は格別だった。また来たいと思うかもしれない。


本当に橙の沈む丘は、天使の毛髪がない以外は完璧な場所だった。

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