豊艷の月 二十一日(晴れのち曇り)
豊艷の月 二十一日(晴れのち曇り)
まだ開店はしていないけど、日誌は今日から始めることにする。
私がサンクシエカに転居してから二日目になる。
祖父のソコド・ラピリスからお店をもらってからは四十日だ。
なかなか時間が掛かってしまった。予定ではもっと早くこられるはずだったのに。
昨日は荷物を片付けるだけで精一杯で、お店に入ったのは今日が初めてだった。
お店が長い時間、放りっぱなしになっていたのは知っていた。
だから覚悟を決めていたつもりだったのだけど、私が甘かった。埃と小動物で目を背けたくなる荒れ様だった。
裏手からお店に入ったのだけど、扉を開けた瞬間に、空気の動きが目で見えた。埃が煙みたいに充満していた。
私の今日は、埃の除去から始まった。
汚れてもいい服に着替えてから、風の道を作ったりしてなんとか埃を片付けた。
次は小動物の跡を片付けた。どなたのかも知らない小さな足跡とか糞とか。虫の死骸もあったし、何回か叫んだ気がする。
床板の木目が見えるくらいまで掃除ができた。それでもまだ汚れは残っている。
棚に残っていた茶色い瓶は、本当は透明だった。その棚もまだ綺麗にできていない。
まだ掃除には時間が掛かりそうだし、依頼をして綺麗にしてもらうのがいいのかもしれない。小動物の抜け道も探して塞がないと。依頼をするとしたら、いくらかかるのだろう。お金は、そんなにない。