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蜘蛛とラナと自転車カゴ

自転車カゴに張られた蜘蛛の巣。

何度払っても彼らはいつもそこにいる。

どうやら俺の自転車カゴは絶好の狩猟場らしく、河川敷を飛ぶ羽虫たちが次々と捕まっている。

鞄を置けず困っているが、俺のような根暗にはちょうどいい相棒かもしれない。

かれこれ彼らとは1週間の付き合いとなっている。


「私との付き合いはもっと長いけどね」


隣を歩く彼女はそういって明るく笑った。

真夏の太陽にも負けない活気な笑顔だった。

戸由真(こゆま)ラナ。

短く結んだ飾りけのない黒髪。大きい瞳は幼く見える。

セーラー服を身にまとって、膝上までしかないスカートをひらひらと揺らして歩いていた。


「どこみてるのよ? 城谷(しろや)君?」


彼女は意地悪な笑みを浮かべる。

だけど僕は無視した。

彼女相手に言葉を交わすなんて無意味極まりない。

先程終えたテストのことを考える方がまだ有益だ。


「明日のテストのことを考えられたら、もーっと有益だけどね。頭切り替えていこう」


一理あるが諭されるように言われると反感を抱いてしまう。

自転車に乗ってこのまま帰ってやりたい。


「待って。待って。一緒に帰ろう。というか社会に出たらそんな反骨心社会にでたら出しちゃだめだよ!」


勝手に人を社会に出さないで欲しい。社会で生きる以外の道もあるはずだ。

俺は自転車のハンドルに手をかける。


「駄目だよ! ちゃんと社会とか現実と向き合おう!! ラナも一緒に手伝うからさ。 ね?」


ラナはそう言って僕の二の腕を握る。

服越しでもわかる柔らかい手だった。

子供を育てるためにある優しくて温かい女の手だ。

少しだけ身体が緊張してしまう。

俺はあまり女への免疫がないのだ。


「あれれ? ラナでちょっとイヤらしい気持ちになってるの? 手で触れられただけで? あれ? 顔赤いよ?」


ここぞとばかりにニヤニヤするラナ。

お調子者のラナだが、美少女であることには変わりない。

そんな彼女のボディタッチが僕の心を揺さぶらないはずがなかった。

さっきまで悪友のように感じていたラナが急激に女と意識してしまう。


ああ、彼女から汗に混じって香るオレンジの匂いが惑わしてくる。

何も感じなかった林檎ほどの大きさがひどく魅力的に映った。

セーラー服のリボンを解けばその中身が見えるのだろうか。

きっとほのかに甘い匂いのする雪白の果実が実っているに違いない。


「あ、あの……」


ラナは真っ赤な顔でプルプルと震えている。

脚を内股にとじて尿意に耐えているかのように膝を擦り合わせていた。

しまった。

つい性的な思考になってしまった。

だけど俺も健全な男子だから仕方ないだろう。


「そ、そうだけど……」


恥ずかしそうに彼女は俺の顔をみつめる。

くりっとした瞳が子供のように濡れていた。

可愛い。

俺はつい思ってしまった。


もっといじめてしまいたいと。


この河川敷には俺達以外は誰もいない。

彼女の手を払う際に事故を装って双房に触れることができるのではないだろうか。

しかし、ラナは俺が行動に移す前に手をほどいた。


「ひ、ひとが恥ずかしくなってるときに……もう最低!」


彼女は両手で胸を隠し、すたすたと前を走っていった。

やってしまった。

つい彼女のまえで卑猥なことを考えてしまった。

考えてはいけないことを考えてしまうものなのだろうか。


戸真由ラナ。

彼女は他人の心が読めるテレパシー少女。

妖怪サトリの末裔である。


だから彼女のまえで卑猥なことを考えてはいけない。

危険な妄想をしてはいけない。

すべて筒抜けなのだ。


しかし彼女がまえを走るせいで、俺はまだ自転車に乗れない。

乗ったら彼女に追いついてしまう。

今すぐ会うのはさすがに気まずかった。

しばらく蜘蛛と二人で歩かなければならない。


いや。

彼女と俺の関係はこの蜘蛛よりも長いのだった。

何度も壊しても巣をつくるこいつのように、俺も再び言葉を結びにいこう。

俺は自転車に跨ってラナの元へと駆けた。


この蜘蛛がいなければ家に帰るころには日が落ちていただろう。

やはりこの蜘蛛は俺の相棒といっても過言じゃないかもしれない。

最後まで読んでくださいありがとうございました。

活力になりますので感想、評価お願いします。


仕事辞めかけで心病んでるので是非お願いします。

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