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事あるときは幽霊の足をいただく!  作者: 北大路 夜明
第6章 Time is running out
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第7話 いざ、仇討ち!

「君、崎山君って言うんだね。ひょっとして、おじいさんは警察官じゃなかったかい?」


「え……」


「知り合いにいたんだよ、同じ名字の男が」


 豊原さんから学生証を受け取るまでのわずかな時間、オレは何と返事をしようか必死に考えを巡らせたが、押し寄せる後悔の大波に、せっかくかき集めたアイデアが無情にも飲み込まれてしまい、あとには何も残されていなかった。


 ノーアイデア。仕方がない、白状する以外に道はなさそうだ。


「……そうです。オレのじいちゃんは元警察官の崎山孝志(さきやまたかし)です」


 腹を括り白旗を上げる。


 すると、豊原さんはわずかに目を見張ってから、嬉し気に破顔した。


「では、君はタカちゃんのお孫さんか! わたしも元警察官でね、彼とは同期だったんだよ。こんなところで会えるなんて人生とは不思議なものだね」


 元警察官──莉帆(りほ)が死んだ事故現場で、日下部(くさかべ)さんが目撃したと言う、藤木さんらしき男と一緒にいた初老の警察官とは豊原さんのことなのだろうか?


 疑念が渦巻いたが、後ろ暗いところなど微塵も感じさせない豊原さんの笑顔に、ひょっとしたらこの人はじいちゃんの死と無関係なのではとの思いが頭を掠めた。


「豊原さんは、じいちゃんが死んだことをご存じですか?」


 そんな質問が口をついて出たのは豊原さんの反応を確かめたかったからだ。


「ああ、三年前だったね。実はわたしも葬儀に出席したんだよ」


 豊原さんは頷くと、じいちゃんの死を悼むような深い息を吐いた。


「タカちゃんのことは本当に残念だったよ。人生百年と言われる時代に、六十代で亡くなるなんて早すぎる。まだまだやりたいこともたくさんあっただろうに。わたしはね、今でもよくタカちゃんを思い出すんだ……」


 それから豊原さんはじいちゃんと過ごした若き日のことを語ってくれた。


 警察学校時代に落ちこぼれという共通点も手伝って仲良くなった二人は、卒業後、それぞれ配属先が異なってからも一緒に酒を飲み交わしたり、休日は寺院や植物園を巡ったりと、お互いが結婚するまで交友は続いたそうだ。


 子供が生まれてからは会う機会が次第に減り、付き合いは年賀状のやり取りのみになってしまったそうだが、退官後、豊原さんは郷土史研究の趣味が高じて博物館でボランティアをし、じいちゃんは趣味のガーデニングに精を出し、それぞれ老後の余暇を楽しんでいた。


「じゃあ、じいちゃんのガーデニングの趣味は豊原さんの影響なんですね」


「元々寺院巡りはタカちゃんの、ガーデニングはわたしの趣味だったんだけど、いつの間にかお互いの趣味を交換していたみたいだね」


「豊原さんは郷土史研究家で出版までされていますし、第二の人生も大成功じゃないですか」


「わたしなんか大したことないよ。すごいのはタカちゃんの方さ。タカちゃんはね、難易度が高いと言われる植物をたくさん育てていたんだからね。本当に園芸の腕を上げたと思うよ」

 

「今はばあちゃんがじいちゃんの遺志を継いで庭いじりをしていますよ。ばあちゃんはじいちゃんよりもストイックだから、いろいろと面倒ですけど」


「そうか、今では奥さんが」


「じいちゃんも豊原さんに思い出してもらえて喜んでいると思いますよ」


「そうだと嬉しいけどな」


「豊原さんに聞いておきたいことがあるんですけど」


 出入り口付近にあるソファーに腰を下ろすと、オレは改めて質問を切り出してみることにした。


 隣に座る真之助はオレが身バレしたことに(へそ)を曲げたのか、憮然としたままだが、気にしていはいられない。好機を逃すわけにはいかないのだ。


 「捜査状況を公言してはならない」と三田村さんとの約束もあるから、慎重に外堀を埋めていこう。


「じいちゃんが死ぬ前日のことなんですが、豊原さんはじいちゃんと会いませんでしたか?」


「わたしがタカちゃんと?」


「じいちゃんが楽し気に話していたんですよ。『()()()()()()()()()()()()』って。それって豊原さんだったんじゃないですか?」


 オレは適当な嘘をでっち上げ、豊原さんの表情を注意深く覗き込んだ。


 もしも、じいちゃんに会ったことを否定したり、表情にわずかでも動揺の色が滲んだりしたら、ここぞとばかりに斬り込んでやるつもりだった。


 こっちには切り札とも言えるじいちゃんの手帳があるのだから──。

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