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最後の挑戦  作者: 石井桃太郎
メジャー開幕
72/73

周囲の反応

「水川さんの旦那、どうなったの?」

 雪子は買い物の途中、近所の人に聞かれた。

「アメリカでやってます」

「ええっ、そうなの?」

 雪子はいつも通り、淡々と答えた。


「ほら、知らないの?テレビでも特集してたじゃない。メジャーよ、メジャー」

 戦力外になってから、近所の人も気を遣って話かけることが少なくなっていた。

だから、知らない人は全く知らないようだ。


「すごいことよね。年俸も億は軽く超えるそうだし」

「いやいや、マイナーだから日本のときよりも厳しいのよ」

 雪子は慌てて答えた。


「それにしても、厳しい世界ね。ちょっと前までうらやましいと思ったけど、定年までは働けない」

「うちの旦那も倒産はあるけど、よほどバカしない限り六十歳まで働けるし」

「とはいえ、この不景気だと厳しいわね」

 久々の井戸端会議。少しだけ、近所の奥さまたちに変化があった。



 スポーツ新聞には、小さいが記事になっていた。

『水川、体調不良でマイナー降格』


「あまりいいニュースじゃないけど、記事になるのはいいね」

 夏実は新聞記事を切り抜いていた。

「やっぱり、メジャーだからニュースにはなるわね」

「それにしても、新チーム弱過ぎね。ゴールドマンが好投も打線が援護できず、五連敗で最下位」

「だけど、チームが弱いとチャンスもあるからね」


 残念ながらレギュラーではない選手にとって、チームの不振は喜ばしいこと。

「そういえば、夏実は学校の子たちに聞かれないの?」

「うん、今のところはバレてないよ」

「あら、幼稚園のときは、すぐに言っちゃったのに」

 雪子が少し笑いながら言った。


「あの頃はよく分かってなかったから」

 夏実は幼稚園のときのことを思い出し、恥ずかしさで顔を赤らめた。

「まあ、近所だから、すでにバレてはいたんだけどね」

「だけど、いつかは聞かれるだろうし、もやもやはしてるよ」

「とりあえず、今は言わない方がいいかもね」

「うん、自分からは言わないつもり」

 ところが、数日後には学年中に知られてしまうことになってしまう。

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