ヒーローインタビュー
「今日のヒーローはもちろん、サヨナラタイムリーを打った葉山選手です」
球場は大きな歓声に包まれ、葉山はお立ち台で右手を大きく振っていた。
「開幕戦から5時間半を超える熱戦となりました。今の気持ちは、どうですか?
インタビュアーは、葉山にマイクを向けた。
「試合を決めるタイムリーを打てたうれしい気持ちと、今日は……長かったなという気持ちが半々です」
「開幕戦から5時間半を超える熱戦でした」
「長い試合ですいません」
葉山が笑いながら頭を下げると、球場全体が笑っていた。
「あの場面、何を考えてましたか?」
インタビュアーは笑いをこらえながら聞いた。
「やっと出番が来たなと。シーズンの始まりなので、とにかくおもいきり振っていこうと。できれば、一振りで決めようと思ってたので、結果が出てよかったです」
「今年のタイガースは違う。という声が聞こえてきますが」
「僕もそう思います。昨年、Aクラスに入ったことで少しチームに自信がつきましたし、新戦力も入ったのでチームに活気が出てきたと思います」
「ズバリ、今年の目標は何でしょう?」
葉山は少し間を置いてから言った。
「今まで恥ずかしくて言えませんでしたが、はっきりと言います」
球場が静まり返った。葉山は続けて言う。
「優勝します……そして、日本一です」
その瞬間、球場はおおいに盛り上がった。
「十年以上、本当に恥ずかしい成績でした。でも、今年は違います。間違いなくチームが変わりました。今シーズンも応援よろしくお願いします」
葉山は頭を下げると、お立ち台から手招きして誰かを呼んでいた。
「誰を呼んでるんだろう?」
夏実が言うと、駆け足で選手が上がってきた。
「では、2人目のヒーローインタビューです。今日の勝利投手、島本選手です」
島本は帽子を取り、三方向にお辞儀をした。
「移籍後、初登板で初勝利、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「今のお気持ちをお願いします」
「こうして、また投げられることがうれしいです」
島本はいつもより緊張しているようだった。
「延長12回表、ピンチでマウンドに上がりました。そのときの心境は?」
「とにかくランナーを返さないことだけを考えてました」
「開幕戦ということで独特な雰囲気があったと思いますが?」
「そうですね。今まで開幕戦で投げたことがなかったんですが……やっぱり違いました」
球場は少し静かになり、淡々と答える島本の話を聞いているようだった。
「しかも、大事な場面を任されました」
島本は少し考えてから答えた。
「ずっと出番を待ってたんですけど、ドキドキでした」
「今日の勝利で、通算97勝。あと3つで100勝ですね」
「そうなんですよね。でも、今はリリーフなので登板数だったり、ホールドの方を気にしてやったいきたいと思います」
「それでは、夜も遅くなってきました。最後に一言お願いします」
「ようやくタイガースの一員になれたと思います。この日を迎えられたのも、自分のわがままを受け入れてくれた家族のおかげです。今年は最後まで一軍で投げられるように頑張りますので、よろしくお願いします」
「今日のヒーローは、葉山選手、島本選手でした」