表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の挑戦  作者: 石井桃太郎
開幕
63/73

延長12回裏の攻撃(1)

 試合は12回裏、大阪タイガースの攻撃。

他球場は終わっていて、ハイライトで結果を流していた。


「札幌ファイターズは、3回に1番・本庄のタイムリーで先制。2番・稲元もタイムリーを打って2点を先行。追いかける仙台フェニックスも、8回に1点を返して、なおも2アウト2塁のチャンス。ファイターズのピッチャーは、セットアッパーの増岡。フォークで空振り三振。最後は久石が締め、ファイターズが開幕白星」


「すごいわ、白井さんも開幕戦に出たのね」

 エドモンズを戦力外になり、2回目のトライアウトで合格した白井。先発投手からリリーフ陣に代わったところで出場したようだ。現役続行を決めた3人は、去年は開幕2軍。ほとんど出番がなかった。


「3人が開幕一軍なんて夢のようね」

「環境が変われば活躍するって、このことを言うのね」

 雪子も夏実も苦労を知っているだけに嬉しかった。



「さあ、12回裏、タイガースは8番からの攻撃。バッターボックスには、セカンドの関田」

 関田は右バッターボックスに入った。

「ピッチャーは、右の萩野に代わりました。昨年は32試合に登板して、防御率が3,31」

 今、投球練習を終えたところだった。


「村野さん、タイガースが踏ん張って今日の負けがなくなりました」

「私が指揮していた頃より粘り強くはなっているので、先頭が出ればチャンスですね」

 それを聞いて、夏実も言う。

「うん、先頭が出ればチャンスじゃない?まだ葉山さんも残ってるし」

「そうね。代打の切り札がいるのは大きいわ」


 そして、チャンスは訪れた。ショートの後方にポトリとボールが落ちて先頭バッターが出塁した。実はこの試合、初めてのことだった。

「さあ、先頭の関田がしぶとくレフト前にヒットを打ちました。そして、代走には翔太が起用されます」

 待ってましたとばかりに代走の翔太が一塁へ向かう。


「9番は代走からレフトの守備に入った坂田。早くも送りバントの構えです」

「当然ですね。ここできっちり決めないと」

 ピッチャーは、まず牽制。ランナーも分かってたかのように1塁へ戻った。その後、外角にストレートを投げて外し、1ボールとなった。


「そうよね、ここは簡単にストライクを投げないよね」

 続く2球目のカーブも、低めに外れてボール。牽制球を挟み、3球目。

「クイックで投げてきた」

 ボールは外角高めへ。バッターは見逃さず、ボールを1塁線へ転がした。かなり勢いがあったがランナーの足が速く、ファーストは諦めてベースを踏んだ。


「坂田、見事に送りバント成功。1アウト2塁とチャンスが広がりました」

 球場は完全に押せ押せムードになっていた。1番・吉田がバッターボックスへ向かう。すると相手キャッチャーは立ち上がった。アウトを取りやすくするために敬遠するようだ。すると球場からは、ものすごいブーイングが飛んでいた。


「この球場、アウェーだと本当にすごいよね」

 あまりのブーイングに夏実も雪子も、ビビっていた。テレビでもこれだけ伝わるくらいだから、実際はもっとすごいのだろう。しかし、次の瞬間、今度は歓声に変わるのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ