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最後の挑戦  作者: 石井桃太郎
開幕
62/73

延長12回表のピンチ

「さあ、試合再開です。ノーアウト1,2塁で、5番の小松。タイガースのピッチャーは、ベテラン左腕の島本。左vs左の対決」

 島本はセットポジションから投げた。ストレートが外角低めに決まり、審判もストライクとコール。

「今のはいい球でしたね」

 実況の言うとおり、誰が見ても素晴らしいボールだった。


 2球目は外角に逃げるスライダー。バッターは思わず手をだして、ファール。早くも追い込んだ。

「今日は調子がいいわね、島本さん」

「そうなのかしら?」

「私ね、高校のとき野球部のマネージャーやってたから、島本さん知ってるのよ」

「そういえば、そうだったわね。なんか恥ずかしい」

 雪子は島本と同世代。プロになってからは、いつも応援していた。

まさか旦那がプロ野球選手になって同じチームに入るなんて夢にも思っていなかったが。


 3球目は胸元をえぐるストレート。ボールにはなったが、これもキャッチャーの要求通り。カウントは、1-2となった。

 そして、4球目。内角低めにスライダーを投げ、空振りを奪った。

「やったわ、三振」

 雪子と夏実は思わず声を上げた。しかし、テレビに映る島本は表情ひとつ変えてなかった。


「今のもいいボールでした。小松を三振にとって、1アウト」

 実況も声が弾んでいた。

「次は6番の今野。今シーズンからは選手会長を務めています」

 その今野が右打席に入った。


「ヤマをはるバッターだから、気をつけた方がいいですな」

 村野に続いて、竹崎も言う。

「そうですね、僕もここは気をつけた方がいいと思います。ワンヒットで勝ち越されますからね」

 すると予感的中。今野は外角にやや浮いたストレートをとらえた。

 しかし、打球はギリギリライト戦の外に落ちた。


「あーっ、ヒヤッとする当たりだったね」

「うん、ちょっと外れてるボールで助かったって感じね」

 雪子と夏実は、ほっとした感じだった。

 しかし、マウンド上の島本は表情ひとつ変えてなかった。


「さあ、2球目は何を投げますかね?」

「変化球だと思いますが、外してくるでしょう」

 そして、その2球目は意外な球だった。


「すーっと落ちたから、チェンジアップだよね?」

「うん、そうだと思うわ」

 テレビの表示もチェンジアップになっていた。

「島本さん、新しく覚えたのね。今までは直球系の変化球しかなかったのに」

 雪子も意外なボールを投げたのは、やや驚いた。


「今のはチェンジアップですね」

 実況も驚いていた。手元の資料にはデータがなかった。

「そうですね、ボールを抜くことを覚えれば投球の幅も広がりますからね」

 竹崎も知らなかったので驚いていた。


 そして、3球目は外角のスライダー。これも外れたため、バッターも見逃した。

「さあ、2ボール1ストライクとなりました。次は何を投げるでしょう?」

「思い切って内角がいいかもしれませんね」

「竹崎さんは?」

「僕も同じです」


 サイン交換をしたあと、島本はセカンドランナーを見た。そのあとで投げた。ボールは内角へ行って、すーっと沈んだ。

「内角のチェンジアップ!?」

 思わず手を出してしまったという感じで、ボールがバットに当たりショートへ。ショートは獲ると、セカンドへ送球。

セカンドはベースを踏んだ後、ファーストへ送球。

見事なダブルプレーを完成させ、球場は大きく盛り上がった。見事、ピンチを脱出。


「これでタイガースの負けはなくなったわ」

 3人はよかったと、ほっとした。

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