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最後の挑戦  作者: 石井桃太郎
開幕
61/73

投手交代

「仙崎監督、たまらず投手交代を告げました。さあ、誰でしょう?」

 実況が言うと、シーンとなった。聞こえるのは球場の音だけ。

「大阪タイガース、ここでピッチャーの交代をお知らせします。ピッチャー・河西に代わりまして、島本」

 島本はリリーフカーに乗って出てきた。


「ここで島本をマウンドに送ってきました。村野さん、どうですか?」

「使うなら、この回の頭からですね」

 村野はややキツイ言い方をした。

「竹崎さんは、どう思いますか?」

「うれしいですね。去年まで一緒にやってたので、また出てくれるとは」

 竹崎にとっては、同じ左投手で後輩。お互い手術を受けてるし仲もよかったようだ。


「よかったわね、島本さん」

 雪子も夏実も喜んでいた。

「うん、まあね」

 しかし、愛はあまり嬉しそうな顔をしてない。

「何か私たち変なこと言ったかしら?」

 雪子が愛の表情を見て聞く。

「ううん、別に。ただ、ちょっとだけ複雑なのよ」

 そういうと、愛は黙り込んでしまった。


「タイガースは、河西に代えて島本をマウンドに送りました。昨シーズンは、1軍での登板はありませんでした。最後に投げたのは、2年前の8月14日の巨人戦」

 実況が言っている間、島本の投球練習の映像が映し出されていた。

「昨オフ、東京エドモンズから戦力外通告を受け、タイガースにはトライアウトで入団。オープン戦では、6試合に投げて無失点と結果を残し2年ぶりの開幕一軍。竹崎さん、試合前のインタビューでは何と言ってましたか?」

「今まで一度も開幕戦では投げてないので、チャンスがあればうれしいと」

「それは意外ですね」

 雪子も夏実も竹崎のコメントを聞いて意外に思っていた。


「彼は5年連続で2ケタ勝利をあげましたが、開幕投手には縁がなかったんです。その間、3回は僕が投げたんですけどね」

 竹崎が少し自慢げに言った。

「私も彼を推したことが一度ありましたが、ちょっとやんちゃな面もあったので直前に外したんですよ。今となっては笑い話ですが、あれは忘れませんよ。ははは」

 村野の笑いに、雪子と夏実はぞっとした。これは何かやったに違いないと。

愛は2人の様子を見て、言いづらそうに答えた。


「うちの旦那もバカよ。酒に酔っぱらって、なんであのヘボ監督は自分を使わないのか?って言ったらしいのよ。偶然にも近くで監督が飲んでて耳に入ってしまったらしいの。それで外されたのよ。本当、バカよね?ははは」

 それを聞いて、夏実は思わず笑ってしまった。


「夏実、笑っちゃいけないわよ」

 雪子がすかさず注意すると、夏実も「ごめん。笑っちゃいけないよね。だけど、パパはリリーフだから開幕投手に縁がなかったし、候補になっただけでもすごいことよ。でも、そんな裏話があったなんてね」

「いいのよ、気にしないで。うちのは完全な野球バカだから」

 そんな会話をしてると、準備が整ったようだ。5番の小松が左打席に入り、捕手とサイン交換をしていた。

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