日本開幕
「今年は日本の方がメジャーよりも先に開幕するんだね」
大輔はそう言って、居間にあるテレビをつけた。
「美裕ちゃんもいっしょに見よう」
そう言って、夏実は美裕ををテレビの前に連れてきた。
「なんか変な感じね」
そう言ってるのは、美裕の母で島本愛。島本選手の奥さんだ!
「そうね。2人とも移籍したから」
「だけど、こうして開幕を迎えられるだけ感謝ね」
2人はリビングにあるテーブルに座って話していた。
「島本さん、開幕1軍に残れてよかったわ」
「そうね。でも、水川さんは開幕メジャーだから、本当にすごいわ」
「いえ、うちのは本当に運がよかったのよ。島本さんは実力あったんだし」
「そんなことないわ。うちの旦那も運がよかったのよ」
お互いコーヒーカップを手に取り飲んだ。
「さあ、今日からプロ野球が開幕。昨年、久々にAクラス入りした大阪タイガース。今日の相手は、川崎ベイスターズです。村野さん。今シーズンは、どうなるでしょうか?」
「1点差の勝負になるんじゃないですか。先発が2人とも、20代とフレッシュですから」
解説の村野。とにかく試合展開など言うことがよく当たる。野球界の表も裏も知り尽くしている名将だ。
「では、昨年限りで引退し、今シーズンから解説者になった竹崎さんは、どう思いますか?」
「はい。僕も今日は1点差勝負になると思います」
竹崎さんは、昨年まで東京エドモンズでプレーしていた最年長投手。
しかし、投手の命であるひじの故障が癒えず、昨年限りで引退した。
「竹崎さん、スーツ姿似合うね」
夏実は竹崎のすっとしたスーツ姿を見て、かっこいいなと思っていた。
普段はユニフォーム姿が多いので、スーツ姿が新鮮だった。
「大阪タイガースの先発は、エース左腕・河合。対する川崎ベイスターズも、右のエース・三上」
予想通りの2人が先発。144分の1とみるか、絶対に落とせない開幕戦とみるか。
始球式のあと、試合が始まった。