7回裏(3)
代打は左バッターが登場。
体の線は細いが、かなりスイングが鋭い。
キャッチャーがマウンドに駆け寄った。
「やっぱりね。さっきのショートゴロは痛かったね」
「きっと、これが最後の試練なんだと思う。ここが勝負の分かれ目かもしれない」
雪子はそう言うと、黙って見つめていた。
セットポジションから、1球目を投げた。
チェンジアップを打ったがファール。今度は1塁線への鋭いあたりでヒヤッとした。
2球目のストレートは完全に外角に外れ、1-1。
3球目も外角低めを狙ったストレートが外れ、1-2。
「今のは惜しかったわね。今日はあそこを取ってくれないわね」
「日本と比べると、審判のストライクゾーンのバラつきがあるね」
そして、このあと誰も予想してないことが起きた。
なんと2塁へ牽制球を投げたのである。
逆をつかれたランナーは戻れず、タッチアウト。
その瞬間、水川家は一瞬きょとんとしたあと、すぐに大声をあげた。
「やったー、3アウト」
意表をついてプレーに会場もおーっと声をあげ、意外な幕切れに驚いた。
その後、ピンチの後にチャンスありはこのこと。
8回に追加点を取り、3-0。8回、9回も予定通りの登板になり、逃げ切った。
「いよいよ、パパに審判が下されるね」
「大丈夫。信じましょう」
雪子は手を握って祈っていた。




