7回裏(2)
3人目のバッターが左打席に入った。
ここで打ち取れば大きなアピールになる。
俺は振りかぶって、ストライクゾーンにストレートを投げようとした。
「パパ、テンポもよくなったよね」
「うん、姉ちゃんのいうとおりだよ」
夏実が分析した。日本にいた頃は、間が長かったのだ。
「捕手も新田さんだったからね。あの人、警戒心が強いから、最初はボール球が多かったし」
「そうだよね、ママ。投手の能力を最大限に伸ばすリードって言われてて私もそう思ったけど、パパとは合ってなかったのかもね」
「とにかく初球ストライクが多いわ」
そんな会話をしている間に試合は進んでいた。
1-1からのカーブは、ストライク。バッターを追い込んだ。
あと1球。水川家は祈るように見ていた。4球目は外角のフォーク。
カキーンと音がすると、ボールはボテボテの内野ゴロ。
誰もがアウトと思ったが突然バウンドがかわり、ショートのグラブを弾く。急いで送球するがセーフ。
Hのランプがついた。記録はショートへの内野安打。
「今のは仕方ないわね。あれだけ急にバウンドが変わるなんてついてないわ」
「うん、パパってこういうことも多いんだよね」
7回裏2アウト1塁。
俺は打たれた気はしなかったので、すぐに次のバッターのことを考えた。
今度は右バッター、今日はここまでヒット2本。
まずは変化球で様子を見ようとした。
その前になんだか胸騒ぎしたので、牽制球をすばやく投げた。
ランナーは少し慌てて、1塁に戻った。
ファーストも来るとは思ってなかったらしく、少しびっくりした顔をしていた。
ゆっくりと自分のところへボールを返した。
「よし、牽制球きちんと入れたわね」
「パパ、こういうときランナーを気にしない場合が多いからね。私の念が届いたかな」
「そうかもしれないね、姉ちゃん。なんか急に投げたような気がする」
雪子も夏実も大輔もランナーが出たので、少しドキドキしながら見ていた。
続いて初球は、外角低めのストレート。外れてボール。
キャッチャーは、ゆっくりと返球。
「次は確実にストライクを投げるはずね」
そう言うと、2球目はゆっくり落ちた。おそらくチェンジアップ。
微妙なところだったが、判定はボールだった。
キャッチャーは、ゆっくりと投げ返そうとした。
しかし、セカンドに向かうランナーを見て慌てて2塁へ送球。
ショートのカバーも遅く、セーフ。
「今のってディレートスチール?」
「そうよ。キャッチャー、何してんのかしら?」
雪子はいらついた。2アウト2塁と一転してピンチ。
3球目は、内角のシュート。鋭い当たりが3塁スタンドに入る。
そして、4球目は外角へチェンジアップ。
バットが出かかったが、外れて1-3。
そのあとベンチからサインが出たようで、明らかに外してフォアボールとなった。
2アウト1,2塁とピンチは広がり、代打が告げられた。




