もやもやする心2
試合は1-0とリードし、これから6回表の攻撃が始まるところだった。
エース左腕・ゴールドマンが5回無失点と抑えていた。
俺は出番を待っていたが、いっこうに呼ばれない。
先に呼ばれたのは、もう一人のライバル投手だ。
どうやら7回から登板するらしい。
となると、8回以降の登板になるはずだ。
しかし、左のセットアッパーのウィルソン、抑えのライトルも使うという情報もある。
もしかしたら、自分にチャンスはないのだろうか?
コーチに確認しようとしたが聞きづらかった。
俺の心は、もやもやしていた。
「坂本さん、スコアは、どうなってるんですか?」
「5回を終えて、1-0でリードしてるみたいですね」
現地スッタフから聞いた坂本が答えた。
「もしかして、もう投げてたりなんてことは?」
雪子はおそるおそる聞いた。
「いや、まだですね。今日は開幕投手が最後の調整で、5回まで投げたみたいです」
水川家は、ほっとした。最後かもしれない姿を見たかったからだ。
「でも、先発投手が、もう少し投げそうな感じですね」
「そうなんですか」
「そうすると、水川さんにチャンスが来るかどうか」
それを言われて、はっとした。
「ある程度、決まってますからね。これで登板がなければ厳しいかもですね」
分かっていたことだが野球という世界は、いつも厳しい。
「大丈夫。祈りましょう」
雪子はそう言うと、手を組んで登板があることを願った。
6回表の攻撃。スターズは、1アウト満塁のチャンス。
8番バッターが打席に入った。
「チャンスですね。これでダブルプレーにならなければ、代打が出るでしょう」
水川家は、みんなで画面に釘付けになった。
次は投手なので、おそらく代打が告げられるはずと思ったからだ。
しかし、3球目のカーブ。
完全にタイミングを外したバッターは、ボールを当てるのが精一杯。
投手へのゴロとなり、キャッチャー、ファーストと渡り、最悪のダブルプレー。
6回表も点が入らなかった。
「あー、これで先発投手が、もう1イニング投げそうね」
1-0のまま、裏の守りになった。予想通り、投手は変わらなかった。
しかし、このあとチャンスが訪れるのである。