オープン戦の最終戦
今日がオープン戦の最終戦。
昨日の試合で、自分以外の3人が投げた。
1人は連投にも関わらず、1回を3者凡退の無失点。
まだ年齢も若いし、もう決まりと見ていいだろう。
しかし、あとの2人も失点はしているけど、どちらも自責点はなし。
どちらも味方のタイムリーエラーによる失点らしい。どう転ぶか分からない状態だ。
俺の成績は、5試合目は失点。しかし、これはエラーで出たランナーだから自責点なし。
6試合目は、ランナー1,3塁のピンチを味方の好プレーで抑えた。
まだ自責点なしと抑え続けていた。
「水川さん、今日は何回から投げる予定ですか?」
急遽、日本からテレビの取材が来ることになり、試合前にインタビューを受けていた。
「それが分かりません。本来なら昨日の試合だったんですけど、5回で雨天中止になったので」
不運にも雨が降ってしまい、俺に登板のチャンスが回って来なかった。
しかも、今日の試合は開幕戦のスタメンで戦うらしい。
完全な予行演習にするらしく、場合によっては先発投手が最後まで投げ切る可能性もあるという話も出ている。
「水川さん、絶対にチャンスは来ますよ」
テレビ局のスタッフの励ましの言葉を聞いても、ピンと来ない。
すでに抑えとリリーフも何人か確定しているので、さらに登板チャンスが減っている。
全く予想していなかった“登板なし”という可能性も残っている。俺は非常にネガティブになった。
そして、今日は娘の卒業式。観に行くことできなくて非常に残念だ。
野球界でも、WBCの決勝も行われているのだという。
日本は決勝に進み、韓国と戦うらしい。
おかげで日本もメジャーのオープン戦も、いつもより小さい扱いになっているらしい。
そして、運命の試合が始まった。
先発は開幕投手に指名されたエース・左腕のゴールドマン。
左投手なのに最速155キロを投げる剛腕。
FAで獲得しただけあって、すんなりと5回を抑えていた。