厳しい宣告
ようやくメジャーの雰囲気に慣れてきた。
なんて思うこともあるけど、実際は必死。
とにかく若い選手もハングリー精神が強い。
生き残りをかけたサバイバルゲームは、今も続いている。
4試合目のマウンドに、俺は立っていた。
6回から1イニングを予定。相手はマイナー中心だけど、メジャーの選手も出てきた。
ボールの縫い目を見ながら、ストレートを握る。
日本ではわりと捕手任せにしていた配球も、こっちに来てからは自分で考えるようになった。
メジャーでは投手主体で、投手が投げたい球を投げることが多いからだ。
おかげで自分自身、この歳なのに成長しているような気がしていた。
1アウトからヒットでランナーを出したが・・・
内野ゴロを打たせ、ダブルプレー。この日も無失点で切り抜けた。
開幕2週間前、2次カットが発表された。
今回は自信を持っていた。リストの中には、もちろん自分の名前はない。
少し安心していると、急に投手コーチと監督に呼ばれた。
「ちょっと部屋まで来てくれないか?」
一瞬、ドキっとした。俺はおそるおそる部屋に入った。
「残りは2枠だ。それを5人で争うことになる」
いきなり投手コーチが切り出してきた。続けて監督が言う。
「やるからには優勝は狙う。でも、まだチームの基礎を作っている段階。申し訳ないが、ベテランの選手は多く残せない。少し劣っていても成長の見込める若い選手を使う」
まだまだ英語に慣れてないが、なんとなくチームの方針は分かった。
マイナーでも、同じように成長の見込める若い選手の方を使うと言われた。
もし、マイナーになった場合、メジャーに上がれない可能性もあると説明された。
やはり、年齢はメジャーでもネック。俺は腹をくくった。
メジャーに残れなければ、そこで終わり。
最初は1年というつもりだったが、そんなことは言ってられない。
家族も心配だし、先がなければやっていても仕方ない。
自分にとって、本当の最後の挑戦を迎えた。