表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の挑戦  作者: 石井桃太郎
夢のつづき
44/73

1次カット

 その後も、オープン戦が行われた。

2試合に登板し、なんとか無失点。結果を残すことができた。

チームも形になりつつあり、お互いの名前と顔も一致してきた。


 同僚の選手に聞かれる。

「歳はいくつ?」

「もうすぐ35歳になるよ」

「見た目若いな」

「ははは。ありがとう」


 片言でなんとか会話することができた。投手陣では、2番目に高いことも分かった。

このチームの最年長は、かつて先発として180勝をあげたライトル(38)だ。

1年間のブランクがあるが、新チームができることで現役復帰した選手だ。

そんなライトルと話す機会が巡ってきた。


「もう先発には、こだわってない。投げれるなら、どこでもいい」

 2年前に先発失格の烙印を押され、球団から解雇通告。そのまま辞めたと聞いた。

「あの頃は、子どもたちと一緒に過ごしたかったというのもあった。でも、子どもたちに投げてほしいと言われて。そんなときにオファーをもらったから、喜んで引き受けたよ。地元だしね」


 それを聞いて、俺も共感した。

今、自分が挑戦しているのも、家族のおかげ。感謝している。

でも、チームに残れるか分からない。やっぱり、不安。

そして、今日は1次カットの発表日だ。



「残念ながら、ここに名前が載っている者は・・・」

 そう言って、首脳陣が名前の載ったリストを貼った。

 アルファベットで書かれているので、すぐには分からなかった。

 でも、肩を落として落胆している者、膝まづいた者、ボーっと立っている者。

 周りの反応を見て分かった。


「よし、残った」

 俺は思わず握りこぶしを作った。

 すぐに連絡しよう。俺は携帯電話を取り出し、邪魔にならないように連絡することにした。


「もしもし、雪子」

「もしもし、あなた?今、寝てたんだけど・・・」

 俺は時計を見た。時差を計算して言った。

「ごめん。夜の2時過ぎか?」

「で、どうだったの?」


 俺は一呼吸してから言った。

「大丈夫。まだ残ってる」

「よかったわ~」

 雪子の安心した声を聞いた。


「何言ってるんだよ。まだ先は長いよ」

「でも、開幕まで1ヶ月切ったじゃない。この先は、どうなの?」

「“2次カット”が待ってる」

「そうよね。毎日がトライアウトの連続だもんね。こっちも疲れちゃうわ」

 俺も少し疲れを感じていた。登板するときは、毎回が試験のようなもの。


 いつもより、長い時間話した。

子どもたちのこと、こっちの生活のこと。

とにかく頑張るしかない!俺は次に向けて進んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ