久々のアピール
暑い日差しの中、試合が始まった。
初回に、北田が先制タイムリーを放った。北田は3つ上のベテラン選手である。
さらに点数が入り、5回で6−1とリードしていた。
俺は登板に備えて肩を作った。まず、4回にコーチに呼ばれ、プルペンで作り始めた。
けれど、先発投手が抑えていたので、登板はなかった。
隣では、島本が6回から作り始めた。そして、先に呼ばれたのは・・・
“ピッチャー 島本”
球場にアナウンスされた。ワーといった歓声は全くない。
なぜなら、ここは2軍だからだ。試合を見に来る観客は全くない。
ベテランの北田を見に来た記者が数名いるから、いつもより多かった。
「よーし、行ってこい」
コーチにそう言われ、島本はマウンドに向かった。
先発投手が6回に2点を取られたので、6−3になっていた。
予定では、2イニングらしい。その島本は、7、8回を6人で抑えてきた。
その間に、俺はもう一度、肩を作るように言われた。
このように、1試合で2度作ることは日常茶飯事。しかも、登板がないこともある。
最近でこそ注目されるようになったが、なかなか目立たないポジションである。
だから、中継ぎ投手は、しんどいポジションなのである。
でも、今日は必ずあるということが分かっていたので、少しだけ楽な気持ちだった。
「最後、たのんだぞ」
コーチからハッパをかけられ、マウンドに向かった。
久々の登板なので、胸がドキドキしていた。しかも、2軍戦とはいえ、セーブのつく場面である。
こんな場面で登板したのは、いつ以来になるのだろうか?
「水川さん、落ち着いて投げれば大丈夫ですよ」
そう声をかけてくれたのは、捕手の白井だった。有望な若手である。
と言っても、プロ入り10年目の28歳。
捕手は一度、レギュラーが固定されると奪うのが困難なポジション。
俺はなかなかの実力があり、配球もうまい選手だと思っている。
しかし、今の捕手がすごすぎるのと、打撃が今ひとつで、なかなか上で活躍できていない。
俺はロージンバックを手に取った。
そして、投球練習を始めた。ストレートを中心に5球投げた。
うん、調子はいい。今日はいける!
最初のバッターは、若手だった。右バッターで振りは鋭い方だ。
俺は振りかぶって、ストレートを外角に投げた。ストライクのコールが球場に響き渡った。
続いて、内角低めにカーブを投げた。これは外すサインだったので、ボール。
3球目は、外角低めにスライダー。ファールを打たせ、バッターを追い込んだ。
そして、4球目は・・・高めのストレート。空振り三振!
「よっしゃー」
俺は珍しく雄叫びをあげた。こんなに上手くいったのは、久しぶりだった。
続くバッターもスライダーでつまらせ、セカンドフライ。
最後のバッターは、外角低めにフォークを投げて空振り三振。
三人で抑えて、セーブをあげた。
そして、俺は選手たちとハイタッチをした。
実に気持ちよかった。2軍とはいえ、プロ初セーブだったことを後から言われた。
1軍でも最後を締めたことはあったが、すべてセーブがつかないときだった。
しかし、これが最後の登板になるとは思わなかった。