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最後の挑戦  作者: 石井桃太郎
夢のつづき
39/73

初心に戻って

 2月10日。

俺はスーツケースに荷物を入れ、家を出た。

これが本当に最後の挑戦。まず、初心に帰って、新人の気持ちで行こうと思っていた。


 夏実は私立中学受験し、見事、第一希望に合格することができた。

あれだけ自分のことで心配させてしまったのに、よく頑張ったと思う。

大輔も元気にやっているようだ。

もちろん、妻の雪子が頑張って、子どもたちを見てくれている。

そんなことを考えていると、すぐにアメリカに着いた。



 新規チームということで、希望すれば球団の僚で過ごせることになっていた。

俺はもちろん希望して僚に住むことになった。

この歳で?と思うかもしれないけど、いつでも連絡取れるし家族にとって一番安心である。


「さあ、車に乗って」

 山城さんの声で、俺は車に乗った。


「いよいよ、始まるな」

「はい」

「どうだ、調子は?」

「バッチリです。去年から休んでなかったので、思い切って休みました」

「そうだな。その方がいい。それから・・・」

 少し沈黙が流れた。


「スカウティングした結果、かなりの人数が集まってしまった。俺も予想外だったよ。他のスカウトも頑張ってやってるみたいで、中南米だけでなく、アジアやヨーロッパにも手を出したから。全部で40人いるな」

「そんなにいるんですか?」

「まあ、メジャーでは普通のこと。それでだんだんと減っていくから。まず、オープン戦には出場できるだろうから、そこで結果を出さないとな。だけど、メジャー枠が先発投手を中心に8人ほど確定してしまったからなあ」


「それで残りは何人くらいですか?」

 俺は一番気になることを聞いた。

「だいたい、3~4人ってとこだな」

「そんなに少ないんですか?」

 やはりメジャーも大変。トライアウトよりも厳しい戦いかもしれない。

「まあ、慌てるなって。シーズン途中昇格もあるし。できたばかりのチームだから、入れ替えも激しいだろうよ」


 新聞や話を聞いて分かってはいたけど、やはり厳しい戦いになりそうだ。

しかし、幸いにもリリーフ投手の枠は余っていた。

やはり、アメリカでも先発投手の方が重宝されているようだ。


「よし、着いたぞ」

 車を降りて、球団関係者に挨拶をした。こんな気持ちは、新人のとき以来だった。

 部屋に入り、荷物を整理した。いよいよ、アメリカでの挑戦が始まる。

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