帰国
俺は次の日、帰国した。
強行スケジュールだったので、体がクタクタだった。
「ただいまー」
「あなたお帰りなさい」
いつも通り、雪子が出迎えてくれた。
「パパ、お帰りなさい」
子どもたちの顔を見て、ようやく落ち着いた。
「よかったわ。契約できて」
雪子は、ほっとしていたようだ。電話をしたときは喜んでくれた。
「まあな。でも、これからが勝負!」
俺も気を引き締めていた。
「とにかく、しっかり準備するわよ。みんな協力するから」
雪子はやる気満々だった。
「パパなら必ずメジャーに上がれるわ」
「うん。ロドリゲスとか打ち取って」
子どもたちも期待してくれた。
「ああ、やってみせる」
とは言ったが、やっぱり不安な気持ちもあった。
だけど、家族のためにも、せっかくチャンスをもらったのだから。
必ず生かしたい!
1週間後に正式にチームの加盟が発表された。
『MLBに新規参入チーム』
2月1日にMLBに新規参入チームが誕生することが分かった。ア・リーグとナ・リーグでチーム数が違うことから、新規参入には前向きとのこと。すでに若い選手を中心に、たくさんの選手がマイナー契約に合意しているという。ヨーロッパやアジア系の選手もスカウトし、多国籍のチームになりそうだ。FAになった選手とも接触。施設や選手の確保など大詰めを迎えているという。
チーム名『アップスターズ』
アップは「上へ行こう」スターは「選手が輝いてほしい」という意味を込めているという。
「マイナーから上がった選手が活躍できるようになってほしい」と早くも育成を中心としたチーム作りを打ち出している。
マイナーチーム名は『インター』
チームに入ってきてほしいという意味があるとのこと。これには選手だけでなく、コーチやスカウトも含まれている。
オーナーは、日本でもプレーした ダン氏。
メジャーに新しい風を吹き込みたいと意気込みを語っている。
記事は大きく取り上げられていた。
久しぶりの新規参入チームということで、選手の移籍や譲渡が行なわれた。
そのおかげで、徐々にチームらしくなっていった。
「新しいチームだから、チャンスもたくさんあるわね」と雪子は言っていた。
俺もそう思っていた。しかし、想像以上にたくさんの選手がキャンプに集結。
トライアウト以上の厳しい生き残りの戦いになるとは、このとき全く予想してなかった。