いざ、アメリカへ
年を越して、ついに1月を迎えた。
俺は山城さんに言われたとおり、アメリカへ渡ることになった。
「あなた、気をつけて行ってきてね」
「あー、大丈夫だよ。契約するだけなんだから」
そう言って、俺は成田空港に向かった。
いよいよだ。俺は覚悟を決めて飛行機に乗った。約11時間の旅である。
長い旅だったな。時差があるから、まだ明るいな。
「ここで待てばいいのかな?」
俺は手紙に記された場所を探していた。
「おい、水川」
「山城さん」
山城はこっちに駆け寄ってきた。
「来てくれたか。心配したんだぞ!テレビで引退するって言うからよ」
「あっ、番組見てくれましたか?」
「あー、見たよ。でも・・・」
「やっぱり、マスコミにはバレてしまったか」
「はい、練習しているところをバッチリ見られてしまいました」
「仕方ないな」
今日の渡米も知られてしまった。
「お前らしいな。一家の大黒柱って感じがするよ。一人身の俺には分からないな」
「そんなことないですよ。家族に心配かけてばかりですから」
「車の中で話すか」
俺は山城さんの車に乗った。車の中は、野球の道具でいっぱいだった。
「そういえば、チームって、どんな感じですか?」
「あー、それなんだがな・・・」
山城は黙り込んでしまった。
「どうしたんですか?」
うーんと考えたまま山城は黙り込んでしまった。
「落ち着いて聞いてくれよ」
「はい」
「実はな・・・インターというのは、新規参入チームなんだよ」
「えっ、そうなんですか」
これに関しては初耳だった。
「ただし、メジャー契約の選手は何人か決まってる。FAで来たり、トレードで来たり。他の球団も協力してくれてな。来週あたり発表になる。マイナーの方は、これからなんだ」
「そうだったんですか」
「1軍のチーム名は考え中なんだ。だから、ユニホームもできてない」
「そんな未完成のチームなんですか」
「ああ。だから、今年1年は大変だぞ!」
俺は聞いて不安になった。でも、それだけチャンスがあることも分かった。
「あともう少しで着く。着いたら、さっそくブルペンに入ってもらうからな」
「えっ、そんな。まだ時差ボケが」
「そんなこと言ってられないぞ。すぐにチームが始動するからな」
そう言って、山城さんは車を飛ばしていた。