表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の挑戦  作者: 石井桃太郎
戦力外通告
3/73

試合前

「行ってきまーす」

 子どもたちは学校へと行った。9月になってから1週間が過ぎていた。

 あの話をしてからも、俺にはチャンスが巡ってこなかった。


「あなた、今日は何時ごろになるかしら?」

「えーと、6時くらいかな?」

「じゃあ、夕飯はいるわね」

「ああ・・・」


 そう言いながら、自分も荷物をまとめていた。バッグにスパイクやユニフォームを入れた。

1軍では、東京ドームで、18:00〜巨人戦が組まれている。

2軍は本拠地・神宮球場で昼間に行なわれる。自分自身、少し不愉快だった。

俺は車のキーを持って、家を出た。今日こそ、出番は来ないかと思っていた。



 車を走らせて、約1時間。球場に着いた。

まず、ロッカールームに言って、ユニフォームに着替えた。

それから、挨拶をしてウォーミングアップを始めた。


「おはよう」

 最初に声をかけてくれたのは、先輩の島本。

 と言っても、同い年。島本は高卒で入団したから、プロ生活は4年長い。


「おはよう。今日は早いね、島本」

「ああ。もしかすると、今日は登板のチャンスがあるかもしれないしな」

「えっ、どういうことだよ!?」

 俺は耳を疑った。


「いやー、昨日の練習で西山が故障したらしい」

「そうなのか」

 1軍の選手には失礼だが、2軍の選手は主力選手の不振や故障を期待している。

 そうなれば、自分に出場のチャンスが広がるからだ。



「でも、誰が昇格するんだろう?」

「鳥居じゃないか。あいつは、そこそこ結果も出してるしな」

「2年目だし、そろそろ1軍で投げてもいいよな」

「そうなれば、今日の2軍戦に俺らが登板できる」

 俺らは顔を見合った。

「よし、がんばるぞ!」


 そのあと、ミーティングが始まった。予想通り、故障した西山の代わりに鳥居が昇格した。

監督からは「今が昇格のチャンスだ」と言われていた。

チームは、もう優勝する可能性がなかった。クライマックスシリーズも絶望的。

残っているのは、最下位脱出。これだけは絶対に避けたかった。

また、今日は球団の幹部が見に来ていた。なんとしても、アピールしたいところだ。



「おい、島本、水川」

 2人は、監督に呼ばれた。

「今日は、お前たち2人を終盤で使う」

「分かりました」

「ベテランらしい投球術を若手に見せてくれ」

「はい」

「今日の出来次第では、1軍昇格もあるぞ」

 そう言われ、思わず嬉しくなった。久々の1軍昇格へ向けて、しっかりアピールをしよう!

 俺は久々に気持ちを引き締め、試合に臨んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ