球団からの吉報
朝起きて、いつも通りスポーツ新聞を見た。
「おい、どういうことだ?」
「何、朝から大きい声出して」
他球団の右のリリーフ投手が受かっている記事が載っていた。
ヒットも2本許し、四球も出していた。しかし、記事を読んでみると・・・
まだ若く伸びしろがある。30歳以上で実績に少ない選手は獲らないと書かれていた。
俺ははっとした。そうだ年齢のこともあった。
今さらだが気づくのが遅かった。自分は34歳で実績がほとんどない!
向こうは26歳だった。
「あなた、どうしたの?」
雪子も記事を見て言った。
「たしかに、そうだわ。球団からすれば若い選手が欲しいのよ」
「そうなんだよな。俺の年齢じゃ厳しいか」
夏実も新聞記事を見て言った。
「そんなー、ひどいよ!パパは結果を残したんだから」
俺は沈んでしまった。そんなとき、北田さんの言葉を思い出した。
「水川、普段投げない球を投げるのはどうだ?」
「例えば、どんな?」
「いきなりで大変かもしれないが、チェンジアップを使うとか・・・」
「いやー、さすがに厳しいです」
「でも、うまくいけば、大きなアピールになるよ。まだ伸びるということが証明されるしな」
「はい、調子が悪かったら使おうと思います」
しかし、他のボールの調子がよかったので、試すことなく終わった。
実際、練習をしたら落ちた。最後まで使うか迷っていた。
悔いなく終わったと思ったが、最後に後悔してしまった。
俺の悪いところかもしれない。そして、期日の最終日を迎えた。
家族と最後まで連絡を待った。しかし、残念ながら、連絡が来なかった。
ディレクターの坂本が取材にやってきた。
「こういう結果に終わりました。奥さん、どんな気持ちですか?」
「2回目がよかっただけに残念です」
雪子は涙を浮かべていた。
「でも、最後まで主人はがんばったので・・・これからもついていきます」
「水川さんの気持ちは、どうですか?」
「これが実力です。少しだけ悔いが残りますが、これから就職活動をします」
「野球選手を引退するということですね?」
「はい。12年間、ご声援ありがとうございました」
その言葉を聞いて、夏実は号泣していた
「野球選手をやめても、パパはいつまでも変わらないパパです」
「パパは、これから第二の人生を歩きます」
大輔もカメラに言った。俺はその言葉がうれしくて涙をうっすらと浮かべた。
俺は翌日から就職活動を開始することになった。
しかし、気持ちの整理がついてなかった。