2回目に向けて
俺は2回目に向けて、本格的にトレーニングを開始した。
練習を終えたら、先日、引退したばかりの北田さんに声をかけてもらった。
いろいろアドバイスをもらうために食事に行くことになった。
「忙しいところ来てもらって悪いな」
「いえ、とんでもないです。ありがとうございます」
北田さんは球団職員に転身した。今は新人とか冗談を言っている!
「水川。まだ現役でやりたいんだよな?」
「はい」
「だったら、もっとアピールをしなきゃダメだな。結果も大事だけど、他の選手を圧倒するようなことをやらないと。1回目のトライアウトを見てたけど、大崎にインパクトを取られてたぞ」
そう言われて、うなづいた。
「あと実績が足りないな。先発は2軍のみ。1軍ではリリーフ登板で何試合に登板したんだ?」
「通算だと70試合を少し越える程度です。一番よかったのは、4年前」
「そのときの成績は?」
「たしか20試合に登板して、防御率が3,36だったと思います」
「う〜ん、実績でも足りないよな」
北田さんは腕組みをしていた。
「ドラフトの順位は、何位だったんだ?」
「6位でした。直前に挨拶に来られて、まさかの指名です」
「スカウトは山城さんだったよな?」
「はい、そうです」
「そっか・・・大卒で6位だから評価は低いな」
「まっ、そうですよね」
俺は自分の過去を振り返っていた。本当に無名の選手で、プロは考えてなかった。
大学では英語を専攻していたし、英会話講師とか通訳を考えていた。しかし、まさかの指名!
「でも、俺よりは評価が高いな。だって、俺はドラフト外だぞ!無名の高校から入って、1年目は雑用係みたいなもの。先輩から、こき使われたよ。4年目に“若手に切り替える”方針になって、起用されたんだ。それで活躍することができてな。今思うと運がよかったな」
「そのとき、見てました。北田さん、急に出てきて、すごかったです!」
当時、彗星のように現れ打ちまくった。.350という高打率で首位打者を獲得した。
このとき、まだ22歳。高3だった俺は大学進学に向けて、勉強をしていた。
「水川は、きっかけがなかったように思う。そして、ずるずるきてしまった気がするよ」
「そうなんですかね・・・」
俺は考え込んでしまった。
「話はトライアウトに戻すけど、大崎とはいい勝負だった。さっきは辛口なことを言ったけどな。球場も一番盛り上がってたし。他の球団も、どうして取らないのか不思議だよ」
「ありがとうございます」
そう言われて、俺は素直に嬉しかった。
「俺の予想だけど、今度は必ずどこかの球団が右のリリーフ投手を取るぞ。FAや外国人の退団で枠に空きができたところもあるし」
それを言われて、俺は期待に胸をふくらませた。
「俺の中では一番いいのは水川、お前だ。ただし、インパクトが少ない!何かやらないとな」
「はい。でも、どういったことをすればいいんですか?」
「たとえば・・・こうするとか」
俺はすべての言葉を真剣に聞いていた。ひとつ秘策をもらった。
ただし、インパクトはあるが成功するかは分からない。
俺は実行するかしないか迷っていた。
「じゃあ。いい報告、待ってるよ」
「はい、ありがとうございました」
そう言って、俺は別れた。とてもいい話を聞くことができた。
俺は2回目のトライアウトに向けて、全力を尽くすことを誓った。




