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最後の挑戦  作者: 石井桃太郎
戦力外通告
21/73

5人目のバッター

 なんと、そこには巨人の大崎が立っていた。

一番対戦したくないバッターに当たってしまった。

思わずタイムをとってしまった。


「どうやって、打ち取りますか?」

 捕手の中山が声をかけてくれた。

「本当ならくさいところをついて四球でもいいんですが、最初に出しているので」

 俺は本音を話した。今日の調子では打ち取る自信がなかった。


「そうですよね。一番いいのは、1球でしとめたいとこですが・・・すでに初球打ちでホームラン。さっきの打席では、低めの難しいボールを2ベースですし」

「今日は調子がいいみたいだし、初球は様子を見ましょう」

「そうですね。変化球を低めに外して様子を見ましょう。うまくいけば、ゴロで打ち取れますし」

「わかりました」


 打ち合わせをして、ポジションに戻った。

俺はロージンバックを手に取り、ボールを握った。

サインを見た。低めに外すスライダーだった。


 ふと観客席を見た。スカウトが熱視線を送っている。

今回は自分にも注がれているのが分かった。

とにかく弱々しさを見せないようにしようとした。


 俺は振りかぶってスライダーを投げた。

一番のベストはストライクゾーンから低めに外れるスライダー。しかし、ボール。


 低めに外れすぎてしまい反応がなかった。

2球目のサインは外角低めのストレート。おもいっきり腕を振って投げた。


 カキーンと乾いた音が球場に響いた。高めになった分、ファールになった。

スイングのスピードは明らかに早い。クビにされたのが不思議なくらいだ。

今日は制球がいまひとつだということを改めて分かった。

その分、ストレートに力はある。


 3球目はスライダー。外角にミットを構えている。

しかし、力んでしまい、外角に外れた。カウントは1−2


 4球目は内角低めのストレート。微妙なところだったがボール。

1−3になってしまった。自分が追い込まれてしまった。



 俺を帽子を取って、汗を拭いた。緊張が高まっていた。

次がボールだったら、2つ目の四球。採用が遠のく可能性がある。

そう考えると、投げるのが怖くなった。しかし、投げなければならない。

ピンチでもないのに、こんなに緊張している。これがトライアウトなんだと思った。


 サインを見た。内角高めのストレートになっていた。

バッターにとっては意表をついていると思い、うなづいた。

振りかぶって投げた。


 少しすっぽ抜けた感じがしたが、予想通りのところにボールがいった。

判定は……少し遅かったがギリギリストライクのコールだった。



 俺は一息ついた。でも、まだ2−3。フルカウントになった。

まわりも静かになって、勝負の行方に注目していた。

こんなに注目されたのは久しぶりだった。


 続くサインは外角のカーブ。見逃し三振をねらっているのが分かった。

俺はカーブの握りを念入りに確認して投げた。

真ん中低めにいってしまったが、ファールとなった。


 7球目は内角低めのシュート。これも見逃し三振を狙って投げた。

非常にいいところにいったが、カット。


 まだ勝負は続いていた。観客席も静かだった。

8球目は空振り三振を狙ったフォーク。俺は握りを確認して投げた。

ストンと落ちたが、これもカット。なんというしぶとさなんだろう。

そして、勝負は9球目。果たして次で決着がつくのだろうか?

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