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アリス革命~乙女のための運命開拓史  作者: ワンと聞いたらにゃーと鳴く
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偏見で大切な人を傷付けてしまったら辛いよね☆

***

 

「……済まなかった。」


 一頻り泣き喚いて落ち着いた私は父に謝られた。


 何故、と思う。悪いのは母だ。父がいないときに起こったことなのだから。私にも悪いところがなかったとは言わない。けれど、ただ耐えて過ごすには幼い身体と疲弊した心には限界だったという話だ。


「お父様のせいではありません。鞭には耐えます。我が儘を申しました。」


 恐らく貴族の教育で、鞭による体罰は一般的なものなのだろう。ならば訴え出るだけ無駄だ。児童虐待の概念もないだろうし。兄に会えて慰めて貰っただけでも儲けものだったかも知れないのだから。治癒魔法で怪我を治して貰えるだけましかも知れないのだから。…だから。


「お父様…ロゼを嫌いにならないで。」


 涙がこぼれる。願うのはそれだけだ。兄はずっと私を撫でている。そろそろ離して欲しい。


「あの教師は暇を出した。もう来ない。…気付いてやれなくて済まない。」


「お父様ぁ…」


 ぐすぐすと鼻を啜る。貴方が悪いわけではないのに、そんな顔をしないで欲しい。困らせたり、悲しませたいわけではないのだ。


「……お母様は?」


 そういえば、父と兄と。……この場にあの女がいない。あの人を母と呼ぶのには抵抗がある。が、表に出せないので心の中でだけ。


「部屋にいる。今は会わない方が良いだろう。……お前に謝っていた。」


「…そう、ですか。」


「許せとは言わないが、余り嫌ってやるな。」


「善処します…」


 父は苦笑した。良かった。家長である父に、許せと言われたら私は従うしかなくなってしまう。やはりこの人のことは好きだ。


 それから、学園の寮にいる兄が休みの度に会いに来るようになった。妹相手に甘い台詞を吐いてセクハラをするのはやめて欲しい。

 大きくなったら、児童虐待とセクハラの有害性を社会に訴えていこう。


 母とは和解をした。たびたび視線を感じたので見ると、調度品や曲がり角の陰からこちらを伺っていたのだ。で、視線が合うとビクッとなって逃げていく。小さな子供がやれば可愛いんだろうけど、あの人あれで貴族の婦人なんてやって行けてるんだろうか。父に一度そういったら頭を撫でられた。何故だ。

 流石に鬱陶しくなって来たので、母に二度目の突撃を咬ました。

 涙目で逃げられたが、余裕で追いついた。子供の脚力を侮ってはいけない。


「お久しぶりです、お母様。何か仰りたいのでしたら手短にどうぞ?」


 母の少し迷ったように目を彷徨わせた後、意を決したように話し出した。

曰く、子爵令嬢だった母は幼い頃は病弱でろくに外に出して貰えなかったらしい。学園でも友好関係を広げることが出来なかった。箱入り過ぎて会話に付いていけなかったそうだ。そのため、社交界でもほぼ空気だったらしい。世間知らず此処に極まれりである。


「卒業後はすぐに旦那様と結婚してね?親の決めた相手だったけれど嫌じゃなかったわ。すぐにエルリックも授かったし。」


 だが、それから数年しても中々二人目が授からなかった。親族からの圧力も大きくなっており、困った母は養子をとることにしたのだ。折しもその時、母の妹夫婦が事故に遭い、亡くなってしまった。彼等には当時一歳になる娘がいた。本当は男の子が良かったが、引き取って育てることにしたのだ。


「では、その引き取られた子が私なのですね。…愛人というのは?」


 兄ではなく従兄だったのか。ダメじゃんセクハラ。


「……それなんだけれどね。」


 母は愛人なんて居なかったらしい。私から聞いて初めて知ったそうだ。父が調べたところ例の家庭教師が母に言い寄って振られた腹いせに流したらしい。叩かれたのは母への八つ当たりでもあったのか。最低な奴だな!


「貴方の苦しみに気付いてあげられなくてごめんなさい。あんなに傷ついているなんて知らなかった。」


 泣いていたのは、傷ついた私を思ってのことだったらしい。


「貴方が死ぬかも知れないと思ってとても怖かった。」


 震えた声で抱きしめられた。苦しい。心が締め付けられる。私は、母が私を見ていないんだと思っていた。でも、私の方が母を見ていなかったんだ。環境の変化と前世との価値観のギャップで自分が一杯一杯だったのは言い訳にならない。ゲーム知識という偏見で、きっとこの人を沢山傷付けた。身に覚えのない事で娘に責め立てられてどんなにか辛かったろうか。


「っ…ごめんなさい!ごめんなさい!お母様!」


 実の両親の事は、私がもっと大きくなってから告げるつもりだったらしい。だから、父は会ったこともない祖母に似ているなんて言ったのか。

 魔力暴走は回りだけでなく、寧ろ本人に危険があるのだそうだ。私の目が覚めるまで、実は二週間もの時が過ぎていたんだって。

 和解のことを父と兄に告げると、


「あの時のフィリアは錯乱して手が付けられなかった。」

 

「母様はロゼを大切に思っているよ。もちろん私と父様も。」


と言われた。兄には抱きしめてられて撫で回された。


 ゲームのロゼリアはきっと色々溜め込んで歪んでしまったのだ。我が儘じゃなくて、もっと勇気を出して向き合っていたら、きっと家族の愛に気付けたのに。


彼女は無自覚の傲慢さに気づけたようです。余裕が無い時って、なかなか人に優しく出来ないですよね。

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