始まり
天気は曇り。太陽が隠れて感じてる温度が低く感じられてるが、夏に向かうにつれ季節特有の 湿度が高くなってきたおかげで、ジメジメしてて心地よくない。
毎年心地の良い日が続いて欲しいと思うのだが、なかなかこの願いが叶わないでいる。
高校の帰り道自転車をこいで町の中を自転車をこいでいると、ぽつぽつと雨が降ってきた。
急いで帰ろうとペダルを回す足をいつもより早く動かす。
早く帰るために信号が少ない道をなるべく選びとり、信号で足止めをくらう回数を減らす道を選んでいると、線路の上を通る橋の下の公園で気になる女の子を見た。
その女の子はベンチに座って空を眺めている。
セミロングで髪が白かった
無理矢理染めているような違和感がないので外国の人かなと思ったが外国の人がこの公園になにしているのだろうか。
家が近所だし、子供の頃時々この公園にも遊びに来たりしたけど、外国人が住んでるとも聞いたことないし、引っ越してきたって噂も聞いたことない。
偶然この公園で休んでいるだけだろうか。だったら天気も悪いのだから近くの店で飲み物でも飲みながら休めばいいのに。
見ていると女の子がこちらの視線に気付いてしまったようで僕の視線とぶつかってしまった。
女の子の視線は厳しく、どう見たってジロジロ見てる僕への批判が混ざっているように見える。
僕は怖くなってお詫びの意味も含めて軽く頭だけを下げて再び自転車を漕ぎ始ると、頬に小さい雨粒が当たり始めたのを感じてすこしだけペダルを早く回して自転車雨を加速させて家に向かった。
家に帰りただいまという、だけど返事はない。
父親はどこかに行った。母親と離婚してそのままこのうちに帰ってきていない。
離婚したときがまだ自分が小さかったので細かいことは知らないし、一回母親に訪ねて見たりもしたが母親はあまりそのことを語ろうとしてくれない。
母親は介護関係の仕事をしていて今日は夜勤だ。
真っ暗な居間に明かりをつけてテレビのスイッチを押す。
アナウンサーが今日のニュースを読み上げている。
その音を聞きながら適当に今日の晩御飯を作って、自分で食べてテレビを見て風呂に入り寝た。
翌日、朝学校の公園の前を通ってみたが女の子はいなかった。
学校にそのまま行き連絡事項を聞きいつも通りに授業を聞きノートにメモした。ノートに書いた中のことは大して覚えていない。
帰り友達に遊びに誘われたので一緒に自転車で行ってそこから歩いた。
歩いてると大通りのわき道からゴミ箱をあさる音が聞こえた。
現実にゴミ箱あさる人なんて思い、音がする方向をみるとゴミ漁ってる人がいた。
まだそれまでだったら、今の社会でもそういう人がいるんだなっていう自己完結で終わるのだが、 それを実行している人物が昨日公園で黄昏ていた白い髪の女の子だから思わず止まってしまった。
「悪い。電話かかってきて少し話すから先行っててくれ。」
友達に適当な嘘をついて、先に友達を行かせ脇の道に入る。
女の子は僕に気づかないようでゴミ箱を漁っていた。
「何してるんですか?」
自分でも何で話しかけたのか分からない。
多分殆ど怖いもの見たさだろう。
「す・すいません!おなかが減ってて何でもしますから見逃してください!」
女の子は話しかけたとたんゴミ箱を吹っ飛ばして素早く土下座した。
「いや、怒る気はないし、店の人とか警官でもないから大丈夫だよ。」
女の子は顔を上げて不思議そうな顔で僕の顔を見る。
慌てたような顔は引っ込んで女の子は無表情になった。
「じゃあ、なんで話しかけたんですか?」
「たいした理由とかもないんだけど、そこで何してるのか気になったんで。」
「何してるように見えます?」
「ゴミ漁ってる。」
「正解です。」
「いやそれは分かってるんだけど…。」
「じゃあ他に何が聞きたいんですか?」
女の子は眉間にしわを寄せ聞いてくる。
立場的にはこっちがそういう顔するはずなんだけど…。
「いやなんでゴミ漁ってるの?」
「お腹が減ったからですが?」
当然のことかのように目の前の女の子はいう。
ここまで常識かのように語られるとなんだかとっつきにくくなる。
「おなか減ったなら食い物買えば?」
「お金があればそうしてます。」
「お金ないの?」
「はい。」
「親は?」
「いません。」
ここまで話して自分は厄介な人と話してしまっているんじゃないかと感じた。
「日本人じゃないよね?」
「日本人じゃないです。」
「何処の人?」
「警官みたいなこと聞いてどうするんですか?悪いですけどそういうのはないんです。」
ないとはどういうことなのだろうか。
国籍がない人なんているはずないと思うし、そんな人がいたら結構なニュースになるはずだけど。
「うーん。まあいいや少し待って」
僕はそういい近くのコンビニに入ってコッペパンを買って女の子に渡す。
「どういうつもりですか?」
「どういうつもりってただの親切のつもりだけど」
「何が目的ですか?」
「目的?」
彼女の顔が僕を疑っている顔になっている。
「いや、いい年の女の子がゴミ箱をあさるのはどうかと思ってやったことだけど…。」
「別にあなたにそんなこと心配されなくても…。」
そう言った途端彼女のお腹の音が小さくではあるが僕の耳に入ってきた。
彼女自身は自分のお腹の音がかなり大きくなったと思いお腹を押さえて、僕を睨んできて、お前聞いていないよなっと語ってきているようだ。
「とりあえず、食べてくれないかな。折角買ったんだし、僕は今お腹すいていないから、ここで君に 突き返されても処理に困ってしまうんだ。もし僕がやったことが大きなお世話だったら謝るよ。だからさ、こんなどうしようもないアホを助けると思ってお願いします。」
そういい頭を下げると女の子はならしょうがないというような感じでコッペパンの袋を開けて口を開けて少しずつ食べ始めてくれた。
「おいしい。」
何口が彼女が食べた後に一言言ってくれた。
その一言が僕はどうしようもなく嬉しかった。
人に言わせればこれはただのお人好しかもしれないし、貧しい人に恵んでやることにより自分が優越感を抱いてしまっているだけなのかもしれない。
「君の名前ってなんていうの?」
「…。」
「どこの学校?」
「…。」
その他にもいくつか答えが出しやすそうな質問をいくつか重ねてみたけど一つも答えが返ってこなかった。
暫く経つと彼女はコッペパンを食べ終えてしまった。
「もう一ついる?」
「大丈夫です。ありがとうございました。」
彼女はそう短く挨拶をしてどこかに去っていってしまった。
流石に追いかけるのはしつこすぎるような感じがして、気が引けたのでやめておいた。
「じゃあまたね。」
僕は彼女に向けて言ったけど、彼女は何も返してくれなかった。
****
久しぶりに人と話した。
本当に久しぶり。
何年ぶりだろう。
前話した人はどうなったんだっけ?
もう何十年もの間人との出会いと別れを繰り返したてきたから段々分からなくなってきた。
いや分からないほうがいいのかもしれない。
もし全部覚えていたら自分の精神が壊れてしまうかもしれない。
私の人との別れ方は全部無残な別れ方だから。
彼もそうなるかもしれない。
もう消えたい。
早く消えたい。
でも私の中で消えるのが怖いという感情がある。
消えてしまったあと私はどうなるのだろう。
暗闇の中にずっと閉じ込められたらどうしようかという心配だけがある。
そして、また人と関わってしまった。
彼も私たちの戦いに巻き込まれていくのだろう。
せめて彼が残酷な死に方をしないように、また私は戦うのだ。
もし私を作った神様って言う存在がいるのならば私は神様を意地でも殺しに行くだろう。
何故私がこんな辛い思いをしなくてはいけないんだ。
私は何もしてないのに。
生まれてこんな思いするなんてあんまりだ。
そんなことを思ってると前から女の子一人と男が一人歩いてくる。
まただ。
何度追い払っても懲りずにやってくる。
私に契約者がいない状態だからだろう。
消耗戦になったらこっちが圧倒的に不利だ。
でもそれでいいのではないのだろうか。
いっそのことこいつらに倒された方が楽だ。
頭の中ではそう思ってるのに、体は生きようと必死に体を動かす。
意味がわからない。
なんで私は生きようとしてるんだろう。
***
女の子と話した次の日の朝は何故かいつもより二時間近く早く目が覚めた。まだ外がほんのりと明るくなり始めてる時間なので、いつもなら二度寝を楽しむところだが昨日遊んで疲れて早く寝たためか眠気が全くなかったため起きて居間に向かったが、暇だったため気紛れで散歩しようと思い着替え外に出かけた。
いつも散歩しないのでコースなど決めずにぶらぶらと歩いていたら自然と髪の白い女の子をはじめて見た公園についていた。
「この前はありがとうございました。朝早くから散歩ですか?」
声がした方を向くと昨日会った女の子がいた。
「まあそんなところかな。前もここにいたけど近くにすんでいるの?」
「今は近くにいますね。」
「へえ。そういえば名前は?」
「名前ですか?」
少女は考えたような仕草をして黙ってしまった。
「そうですね…。名乗るとしたら『ひょう』でしょうか?」
「ひょう?ってどんな漢字?」
「標識の標です。」
「へえ。でも自分の名前言うのになんで悩んだの?」
「暫く言ってなかったので思い出すのに時間がかかってしまいました。」
「はあ?」
名前思い出すのに時間がかかるわけがないのだが、何か分け合って名前が簡単に言えないのだろうか。
でも名前がいえない事情ってなんだろうか。
「そういうあなたはここら辺に住んでいるのですか?」
「ん?そうだけど?」
「そうですか…。それじゃあ用事があるのでここら辺で」
標はそういうと背中を向けて何処かに行こうと歩き出した。
「そうだ。昨日言ってた国籍がないってどういう意味?」
「そのうち分かると思いますよ。多分今口で言って納得できるようなことではないので今は言えません。…ああ後」
去ろうとした標は振り返って僕に何処か優しさがこぼれてくるような表情で答えた。
「小さい子供連れのオヤジには気をつけてください。」
そんな事を言って標は足早に去っていった。
その後僕はちょっと早起きした分だけ余裕思った準備をして高校に行った。
登校のときまでは標の言葉を覚えていたが、授業をうけ、友達との何気ない会話をしている間に 記憶の隅に追いやってしまっていた。
きっと学校の中にいる間子供連れのオヤジに会う可能性が低いせいもあっただろう。
そして僕はいつも通りに帰宅しようとした。
しかし、僕の日常はもう狂っていて、気づいたときにはどうしようもなく巻き込まれていた。ドミノ倒しのように一回倒れたらもうどうしようもなく倒れていき倒れたのを戻すのには酷い労力をしてしまうように僕の日常は狂う。
帰宅途中太陽が僕たちの影を伸ばしていき空の色が暗く変化し始めようとしている時僕は女子中学生ぐらいの子供連れの髭が生えているオヤジと会った。オヤジの方は太りすぎてもいなくやせすぎてもいなく、なんと言うか雰囲気だけだったら親戚の優しいおじさんみたいな印象が出てくる。
女の子の方はショートヘアでスポーツ系の部活に入っていそうである。
僕の頭の中には標の言葉はなく注意を払うことなく普通の親子の通行人だと思いいつもどおりすれ違おうとした。
助かったのはその二人が僕のことをやたらと見ていたことだろう。そのおかげで僕も反射的にその二人の目線が気になり二人を見続けたら僕は標の言葉を思い出した。
僕はすれ違わないでそのふたりの前で自転車を止めて立った。
「ねえばれちゃったみたい。」
女の子がそういう言いながらオヤジの顔色を伺い始める。
「ああ面倒だな。すれ違うときに襲ったほうが簡単だったんだが…。」
オヤジのほうが頭をボリボリとかきながら厄介なことになってしまったという様な感じでいる。
「なあお前。」
「なんですか?」
オヤジの問いかけに思わず敬語になってしまいながら僕は答えた。
「髪の白い女の子知らないか?っていうか知ってるよな?」
「さ、さあ?」
本当はすぐに標のことを思い浮かべたがこの人たちが会う理由も分からないし、怪しいので答えをはぐらかした。
その前に僕事体が標のことをないも知らないって言うのもある。
「誤魔化しても良いことないぞ。こっちはニオイで分かってんだぞ。」
「ニオイってなんですか?」
「ああ、そういう感じなのね。分かった。結灯やってもいいぞ」
オヤジはムスビと呼ばれる女の子に命令した。
「子供には優しくするんじゃなかったの?」
その命令に対してムスビはやや意地悪な顔をしてオヤジの揚げ足を取るように答えた。
「うるせえ。素直な子供限定だ。」
「随分と都合のいい事で」
そう日常会話を二人が繰り返したところでムスビが一歩前に出てきて体に力一杯力を入れるように踏ん張った途端ムスビの体が光って周りの道路のコンクリートが砕けた。
僕にはコンクリートの欠片と焼けた臭いが飛んできた。
みるとムスビという女の子の周りに電気がバチバチと飛び散ってる。
「え、何これ…。」
「そういう演技いらないから」
ボクがそう言うと、オヤジの方は何を勘違いしているのか僕が演技で言っているものだと勘違いしているような返し方をしてきた。
こんな状態で演技できるような神経の持ち主じゃないことを少しは分かってもらいたい。
「いや、だから…。」
「その人は本当に何も知りませんよ。」
僕がオヤジに説明しようとするところに思わない証人が姿を現した。
白い髪が夕日を反射して軽く色を変えながら少し年下に見える女の子標がゆっくりと僕の横から歩きながらやってきた。
「あれ?標なんでここに?というか何処から?」
今僕がいるところは右が広い駐車場になった場所で見渡しがいいから、近づけば分かるのはずのだが標は僕の左側から歩いて気づかれず近づいてきたのだ。
「ここにいる理由その他諸々は後で話します。」
「やっぱり契約者じゃねえかよ。」
「彼は違います。」
オヤジの苛立った火をもったのような言葉に標が冷静な言葉をかける。
「じゃあなんでそいつと知り合いなんだ?」
しかしオヤジの火は収まらないようだ。
「最近よく会うだけです。」
「最近よく会うってことはアレだろ?そいつもこうなる運命なんだろ。」
「そうかもしれません。でも私にはその気はないのでこの人を巻き込むのはやめてくれませんか?」
「それを信じろって可笑しいだろ。」
「後で契約されて私たちの前に出てきたら厄介だもんね。」
標の言葉にムスビもオヤジも聞く耳を持っていない。
「結火やるぞ。」
「おーけー。」
「はあ…ちょっと下がっててください。あと逃げる準備もしていてください。」
僕は標に言われたとおりに下がって自転車で逃走する準備をした。
逃走する準備って言ってもただのいつでもチャンスがあれば逃げるっていうことを心の中で決めただけだけど…。
「やっとやりあえる。」
そういうとムスビの周りを漂っていた電気が塊になって標に飛んでいく。
「もう私は特に戦う理由がなかったんですけどね。」
標がそういうと標の周りに蝶のようにひらひらと何か白い欠片が漂い始めて、それが意識を持っているかのように標の目の前に集まった。
そこに電撃が来る前に白い欠片の集まりが鉄の塊となって電撃を防いだ。
標は冷静な顔をしている。
電撃を防いだ鉄の塊は消え次に白い欠片が標の手に集まりそこに塊が再び形成される。
形成されるまでに時間は一秒もかかっていなかった。
標の周りには白い欠片が常に舞っている。
標の手には武器らしきものが…。
「なんでここで標識を持ってるの?」
そう標が持っているのは標識であった。
でも普通の道路で見るのと比べると棒の部分が短く見えた。
「作りやすかったからですけど何か問題ありますか?」
「いやもっとこう刃物とかさ戦いやすいものがあったんじゃない?」
「そういうのは軽すぎたので扱いづらいんです。」
「ああそうなの軽すぎでやりづらいならしょうがないね。」
僕の常識の中では標識もってちょうどいい重さだって言う人はいないんだけど、ここで納得しておこうと妥協した。
しかも目の前で明らかに常識外のことが起きてんだ。
女の子の一人や二人標識の一個ぐらい振り回しても可笑しくないだろう。多分…。
「クソ」
ムスビが物凄いスピードで僕達に接近してくる。
標も標識を持って同じように接近する。
ムスビが拳を作って殴りかかろうとする。
標はスピードを緩めて拳一個分届かない間合いから、標識をムスビに当て、当たる少し前に手を 放すことにより感電しないようにして標識ごと吹っ飛ばす。
ムスビは後ろに軽く吹っ飛ばされるが足がついてすぐに踏ん張って吹っ飛ばされる距離を短くした。
標が地面に手をつけると今度はムスビの右足首を外側から固定するかのように鉄の塊が形成さ れ次に鉄の棒が右のひざを内側から外側に押すかのように地面から出てきた。
ムスビはそのせいで道路に倒れてしまった。
標が今度は上に両手をかざすとムスビの上に大きな四角い鉄の塊が出現した。
「これでどうですか。」
標はそういって両手を振り落ろした。
「負けるかあ!」
ムスビは手を前に出して電撃を放って鉄の塊を破壊した。
辺りには鉄の欠片と電撃が飛び散った。
「はあ…は。あ…。」
「もうお疲れですか?」
ムスビが息切れをして疲労しているのに対して標は息を切らしてる様子すらない。
「もう島津!」
「もう使うのか?」
「だって勝てないもん。」
「こんなところで使うのか?」
シマヅと言われたオヤジは標とムスビを見比べながら言っている
ムスビは答えにくそうな顔をしている。
一瞬相手の動きが止まったとき、標は再び鉄の塊を生成して投げ飛ばした。
標を自転車の後ろに乗せて僕はその場を全力疾走して逃げた。
「なにあれ」
自転車で全力疾走して結構な距離を逃げて、僕の体力の限界が来たので大きめな広場を見つけ たのでそこで休憩を取ることにした。
あいつらが近づいてきても気がつけるように見渡しがいい広場で標に聞いた。
二人の手には缶ジュースが握られている。
全力で逃げてきたため喉が渇いたのもあるし、色々話すことが多くなりそうなので僕が近くの自販機から買ってきた。
「一人は私と同じでもう一人のオヤジはその契約者です。」
「標と同じって何?」
僕は暑さを軽減しようとYシャツの胸元をパタパタしながら聞いた。
「まず分かって欲しいことは私達は人ではないということです。さっきみたいなことを実際に見ても らわないと信じてもらえないから朝は言えなかったけど。」
標が申し訳なさそううに僕に言ってきた。
実際標の言うとおり何も見てない状態でこんなこと言われても困っていただろう。
「なるほど。確かにあれを見てから言われてもぱっと頭に入らなかったね。」
「すいません。危ない目にあわせてしまって」
「別に良いよ。こうやってとりあえず生きてるし標が責任感じるところなんてないでしょ。」
あの二人組みが勝手に標と僕が仲いいと誤解して襲ってきたわけだから標の責任というよりあの二人の責任だと思う。
でもこうなったからには次からは本当に知らないでは済まない事がとりあえず決まってしまったことは確かだろう。
「ありがとうございます。次に私達はそれぞれ何かを生み出す能力があります。」
そういうと標は手のひらに白いかけらを集めて鉄の塊を生み出した。
「それってどういう原理で出てきてるの?」
「原理は分かりません。私達が存在してる原因、原理も同じように分かりません。ただ分かっているのは…」
「うん」
標は何か言い聞くそうに口をなかなかあけようとしない。
あたりはもう暗くなっていて電灯の光が広場を点々と照らしている。
夏の虫たちが電灯に集っているのが遠めでも分かる。
夜空が星の飾りをつけている。
広場にはもう人がいなく夕方の騒がしさを知っていると寂しくなってくる。
そうやって僕は周りを見ながら標が言うのを待った。
なんとなく標にも色々あったんじゃないか感じたせいかもしれない。
「私達の体は…。」
暫くすると標が口を開いた。
標が緊張してるのか肺に大げさに空気を入れる。
「人の記憶によって出来ているんです。」
僕は驚きでなんて返したら良いのか分からなかった。
まず僕自身が話を理解できていないのもあっただろう。
そんな僕の表情を見てか標が優しい笑顔になった。
「やっぱり気色悪いですよね。」
その標のセリフには自虐的なものが含まれていることはすぐに分かった。
「でも巻き込んだあなたにはちゃんと話さないといけないと思うのでちゃんと説明しますね」
そういうと標は服を軽く上げた。
標のお腹が軽く見えた。
そして標のわき腹辺りが欠けている。
わき腹辺りからは白い欠片が漂っていて、内臓とかは見えない。
血も出ていない。
そこから標が人間じゃないことをはっきりと証明している。
「私たちは人間と同じように体が出来ていません。私たちは人間と契約することにより契約者から記憶を貰います。そしてそれで私たちは自分のの体を作ったり、戦うための力を手に入れます。」
「今の標ってその契約者は?」
「いません。もう作る気がしません。」
「でもそうなると標は…。」
「消えます。」
はっきりと冷たい声で標は言った。
「じゃ、じゃあなんで、わざわざ戦うの?自分たちの命を削ってまで戦う必要なんてないんじゃない?」
「それが、私たちにはあるんです。」
標はそうすると自分の胸元を見せた。そこには奇妙な模様が書いてあった。
「人でいう心臓の辺りに私たちはそれぞれ自分の体を生成するための核を持っています。私たちは、その核…キューブを願いと釣り合う個数を集めると願いがある条件を抜かして1つ叶うんです。」
「叶わない条件って?」
「例えば、願いを増やしてくれとかキューブを何個もくれとかキューブ集め以外で願いを叶えようとしたなどの場合です。」
「なるほど…。それを使えば標は叶えたい夢とかあるの?」
「止めてください。もう私は希望とか夢を抱いてそれが失望や絶望に変わって欲しくありません。生きてもいいことなんてないんです。」
「いや…でもさ。」
「安心してください。私が消えればあなたは普通の日常に戻れます。今回はあなたにちゃんと説 明しておかなければいけなかったので逃げましたが次あの人たちと会ったら私はわざとやられ消えます。なのでせめて明日は外に出ないでください。」
標はその言葉を残して去っていった。
僕は納得しきれない気持ちのまま夜空を見た。
***
やっと消える決断を私のの中ですることができた。
今までも消えよう消えようと何度も思ってた。
やろうと思えば自分でむやみやたらに力を使って消えることもできる。なのに私はそうやって 何も残さず消えるのが嫌だった。
自分できえたがっている奴のくせに贅沢な願いだと思う。
だから彼には感謝してる
あとは私があいつらを見つけて終わり。
あいつらが先に彼を見つけた時が一番厄介だ。
彼らも多分人目をなるべく避けて行動してるだろう。
なるべく人目が無いところを重点的に探そう。
***
僕は部屋のベッドの上で手足をグダーっと伸ばしながら
一晩考えてみたけれども答えは出なかった。
標が自分に何もして欲しくなかったとしたら答えが出ずにただこうやって時間が過ぎ去っていくのは標にとってはいいのかもしれない。
でも標は最後に希望を抱いて絶望したくないと言った。
だからきっと標だって最初から諦めたかったわけじゃない。
なんとかしてあげられないだろうかと思うのだがいい考えが浮かばない。
「夢か…。」
そういえば自分の夢はなんだろう。
これといってやりたいことが思いつかない。
自分の小学校、中学校の卒業アルバムを出してみた。
小学校の将来の夢『必死に生きる』
なんて馬鹿馬鹿しい回答だろう。過去の自分は何を考えてコレを書いたのだろうか。
中学校の将来の夢は書いてなかった。思い出話などで色々誤魔化して将来の夢には触れていなかった。
最終的な結論が『やりたいことをやり通す』だった。
ここまで夢のない過去の自分を振り返ったところで標の言い方に納得できなかったのは、きっと自 分の持ってないものを持っているのに諦めていることじゃないかと思った。
そして今の自分の立場は標を手助けできることが出来るのだ。
時間はそろそろ高校に行く準備をする時間。
今日はいつもとちがい、鞄から教科書を抜いて軽くしておく、これからすることを考えるとそうしておかないと危ない。
肩にかけるといつもの重みがなく違和感からか心の中で不安が襲ってくる。
サボるという行為自体が初体験のせいでもあるかもしれない。
でも自分の中では覚悟は決まっている。
標に何を言って良いかはまだよく分からない。
言いたいことは決まっているけど、それで標が納得するかは分からない。
僕は標ではないから、標がいままで何があって、どんなつらい思いをして色んなものを諦めたのかは分からない。
だからこれで標が納得すかも分からない。
玄関とを僕は開けて家から出る。
「さて、一生懸命にやりたいことをやり通しますか。」
僕は気合を入れて走り出した。
この作品は自分で好きに書いてた小説をどうしようか悩んでいたところに、知り合い達が「さあ、見せてくれ。面白いか面白くないかは俺たちが決める」となかば強引に私を説得して上げさせた作品です。
細かい設定をなるべく無くしてます。理由は書く自分が辛いからです
作者はこんな話作ったらどんな感じで終わるのかなっと思いながら、気楽に書いています