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お話13   顔が真っ赤に

 とりあえずお昼近くになったので、舌をぺろっと出している少女の人形がトレードマークの店に入った。

 彼女の希望はケーキバイキング。

 さすがのうるうたんも甘いもの好きか。

 というかケーキが嫌いな女の子はそう見ないが。


「お昼ご飯はケーキで代用?」

「栄養的にも別腹ということにしたい……んーでもこの誘惑には勝てない」


 ケーキを選ぶ目がキラキラと。少女そのものだ。


「しかし君も堂々としている。高校生の男がチョコパフェに喰らいついている姿は、この店でも十分目立つな」


 たしかに店内の女の子からの視線を感じる。

 そういえば頬にホイップがついていたか、取っておこう。


「むしろ知ったことか、の強い意志ですよ。人目を気にしていては食欲を満足させられませんからね」

「私も満足させてくれるようにフォローをしっかりとしてほしいな」


 口元を(ぬぐ)ってもらう姿はまるで子供……これは少し恥ずかしい。

 しかしうるうたんのご機嫌がいいのであえて逆らわずだ。


「それにしても一慎に対してかなり教育が進んでいるようで」

「ああ、あれか。彼はほかの同級生に荒っぽい真似はしないが、君には遠慮がないようだ」


 ケーキ2個目、ペースが速い。


「しかしときどき叱ってやらないと、上級生にでも平気で事を構えるからな。勇ましい男は好きだが限度がある」

「……さっき3年生のあいつとか言ってましたが、一体何があったんです?」

「そんな話は無粋だろう、せっかくのデートなのに。それより五里さんとかいう女の子の説明をしてもらいたいよ」


 フォークでお皿をコンコンと。

 お行儀悪いですよとか、デートってなんですかと訊ねようとしたが、彼女の質問に答えることにした。

 うーこちゃんに言った事と同じ説明を繰り返すと、最初は胡乱(うろん)げだったうるうたんが3個目のケーキを口に運ぼうとして吹き出した。

 反応まで同じかい。


「なるほど。つまり君はいつでも君にしかできない仕事を請け負わされるわけだ。うんそうだな、それでいいよ。彼女なんて必要ないさ八方九介には」

「とりあえずひどいことを言われているのは理解しましたよ。言葉どうりそうなってますけどね!」


 含み笑いをしていた彼女が気を抜いたのか、思わず「けぷっ」という息をもらした。

 自分でも信じられないように口元を手でふさぎ、上目遣いにこちらを見ている。あららこれは……


「……今の。聞いたな?」

「ええ。忘れられない記憶として刻んでおきました」


 顔が真っ赤に。日頃のうるうたんらしくないが、この可愛さは強烈だ。

 一慎に見せてやりたいくらいだ。


「――まあいい、こんな醜態を(さら)すのは君だけだ。もう恥ずかしくなんかないぞ。まだまだ食べる」


 頬が上気しながらも膨れっ面でケーキケースのほうへ歩いていく彼女を見て、どこか安心した。

 美人で凛々(りり)しいだけではなく、彼女には年齢にふさわしい女の子ならではの魅力というのも当たり前のように存在している。

 だとしてもおそらく本人は不本意だと考えているに違いないが、自覚しない可愛らしさというのもまたギャップがあっていいものだ。

 まさしく俺的にはごちそうさまでした。



  


 食後には運動、というわけで天気もいいことだしいつもの河川敷へ。

 歩きながら北上し、一慎のバイト先である複合ショッピングモールへ向かうことにした。ゴリさんたちと行ったモールとは大きさも場所も違う施設だ。

 この陽気に休日とあって家族連れや運動目的の人々、様々な老若男女が入り乱れて散策している。

 地形がそうさせるのかいつも心地いい風が吹く。

 うるうたんも目を細めて気持ちよさそうに向かい風を受けていた。


「何度も来て歩いているのに飽きないなここは。隣にいるのが彼でないから新鮮だよ」

「好きな人とのんべんだらりするには最適ですねえ」

「私と歩いているんだから最適だろうな」


 フォローをしている気はしないが、とにかくもニコニコしてくれているなら何も言うことはない。笑とけ笑とけ。

 沈黙というか漂う間というのに居心地が悪くなる相手ではない。

 しばらく2人とも何も喋らず飛行機雲を遠目に発見したり、対岸で活動する少年野球の声を聞いたりと人気が少なくなる場所まで景観を見続けていた。

 

 ふと、うるうたんの足が止まる。

 数歩進んでから振り返ったが、その顔に浮かぶのは無表情だった。

 さすがにどうしたのか声をかけようとしたとき、彼女の視線が自分の背後から近づいてくる気配の先にあることに気が付く。


「へえ! えらいもの見せてもらったぜ。男に1年のガキがいるっていうのに、浮気相手も1年かよ」


 初対面で決めた。

 同じ学校の生徒だろうが年上だろうが、近づいてきたこの野郎どもは俺の偏った直感に基づいていやな奴に認定する。

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