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第十五話 不安と希望と。

 ニロ=ハイマンはイーストマジックアカデミーきっての秀才であり異端児である。

 今は勇者の仲間として行動している、しかし彼女はこの世界のラスボス的存在であり、勇者一行の最終目的である……筈なのだが。


「あんな可愛い子がラスボスな訳ないじゃない! きっと二つ名が同じなのも偶然よ!」

「俺もそう思いたい。でもエターナルをプレイして人間は全員知ってるぐらい有名なんだろ?」

「そうだけど……紅の魔女はもっとこう、こんな感じで胸があったわ、あんな幼児体系でもなくて大人の女みたいな」


 ベットの上で乙女座りしているイオが、自分の胸を両手で持って動かしながらアピールする。

 王への謁見が終わり、身支度を済ませ出発するべく宿へ戻ってきたのだが、ニロの問題を話すとイオはあり得ないと説明してきた。

 まだ生きている時にエターナルをプレイしていた再に、イオは何かのイベントで紅の魔女の姿を見たらしいのだ。

 話しているように、今のニロとは正反対の大人の女性であるらしい。


(うーん。葵さんが何か思い出していれば分かるんだけどな、葵さ~ん?)


 絶対無実と言い張るイオ相手では話が進まない、葵さんを呼んで確かめようとする。

 しかし、昨日の夜を境に、葵さんはまったく反応しなくなってしまった。

 心配だが葵さんなら大丈夫だと自分に言い聞かせ、結局今はニロを信じるしかないという結論に至った。

 そして、準備も整い。西の都を出発する時が来たのだが……。


「わたし達、これから勇者の一行として魔王を退治する旅に出る……のよね」

「そうだぜー、はりきって……流石にそうもいかないかなこりゃ……」

「俺、風でゴミが転がる場面を始めて現実に見たよ……」

「襲われないだけマシ」


 ひゅ~……。

 街の門の前、寂しい風が吹いた。

 見送り無しの寂しい出発となった。随分と嫌われてしまったようである。

 魔王が統治する北の地までは馬車で三週間はかかるそうだ。

 イオがさっさと飛んで行って倒してしまえばいいと思ったが、魔王と戦う為には魔王が住む城に入るための条件をクリアしなければならないらしい。

 馬車の手綱を握りながら、隣に座るイオにその条件をもう一度確認する。


「まずは魔王城を開く為の五つの秘宝を見つける。これでいいんだな?」

「そうよ。ゲームと同じなら、エターナルでは絶対に五人で魔王と戦うことになるわ。五人それぞれが秘法と呼ばれる武器や防具を見つけ出して、最終的にようやく魔王に挑めるの、幾らわたしがチートでも扉を開く事は出来ないわ」

「成る程な。じゃあ今のところ仲間はイオを含めて俺とりっくん……ニロの四人。このメンバーで魔王に挑むのだとすると、あと一人仲間になる訳だ」


 俺のバグを使えば魔王城の扉をぶち壊せるのではと思ったが、この旅はイオを成長させる為に必要なことだ。極力バグの力は使わない事にした。

 そもそも使い方も実はよく分からない。今までの経緯を思うに、感情が高ぶった時にしか使えないのではないかと推測している。


「ゲームとかはよく分からない。けど秘宝のありかなら一つ心当たりがある」

「え? ニロ、それは本当?」

「おお……いつからそこに」


 後ろを向くと、馬車の中に居たはずのニロが屋根の上に座ってこっちを見ていた。

 ニロはおもむろに立ち上がると、右を向いて右手で持つ杖でその方向を指し示した。

 示された杖の先を見ると、大草原にぽつんと森らしき一帯が見えた。


「魔物が住む森。あの森の中心に秘宝の一つ、エターナルシールドが封印されていると聞いたことがある」

「エターナルシールド……たしかそのアーマーも」

「ええ。これはエターナルアーマーだって教えてもらったわ」

「なんだなんだ? ちょっと興味をそそられる話しだな、よし決めた。そのエターナルシールドは俺が頂くぜー!」


 りっくんは馬車の窓から体を乗り出してやる気満々の様子である。

 何はともあれ最初の目的を見つけた俺達は、馬車の方向を森へと定めて進んだ。


○●○●○


 キィキィキィキィキィ……ギャギャギャギャギャ……。


 なんとも表現しがたい獣のような鳴き声が聞こえてくる。

 背の丈より遥かに大きな木々が生い茂る不気味で巨大な森である。

 入り口は木の間が狭く馬車では勧めず。仕方なく歩いて森の中を進んでいた。


「久々の獲物だねぇ。八つ裂きにしてゆっくり楽しもうじゃないのさ」

「男二人はわたしが貰うからね、美味しそうだこと」

「クスクスッ、あの女の子達も美味しそうね」

「わたしはあの小さい子。子供は肉が柔らかいから美味しいのよね」

「ドキドキ、初めての人間、美味しいのかな? ドキドキ」


 いたのだが、俺達は見事に複数の魔物に囲まれていた。ざっと見渡した感じでも二十匹以上は居るようである。

 取り囲んでいるのは、アルウラネ。薄白い緑色の肌、上半身は人間の女であるが、球根に花の咲いた様な植物の下半身を持つ魔物である。

 一言で彼女達を表現すると……エロい。色々エロ過ぎる。

 これで十分である。


「あらら、凄い雑魚臭が漂う敵ね」

「ああ、なんかゲームに無理やりお色気要素を入れたような敵だな」

「エロ担当かーいいなそれ、俺は大歓迎だぜー!」

「邪魔をするなら燃やすだけ……バーニング」

「何こ……――」


 恐らく、何これ? と言いたかったのだろう。

 アルウラネの一人が、自分の足元が赤く光ったのを不思議そうに見て声を失った。

 ニロの魔法により、地面から噴出した炎に焼かれて炭となったのだ。

 薄い緑色の肌を黒く焼かれ、不思議そうな顔のまま、アルウラネの体は風と共に頭から砂の様にサーと流れて空中に四散した。


「面倒。まとめて始末する。火の精霊イフリートよ――。――。――。――、」

「まさか……火の精霊イフリートの加護を持っているの? じゃあ、こいつがリフティル女王様が唯一恐れる人間……く、紅の魔女?」


 アルウラネ達に激震が走った。

 ニロは彼女達アルウラネの間では、かなりの有名人であるようだ。


「そんな……死にたくない、助けて!」

「待ってよみんな! きゃ……いった~い、ころんだぁ」

「女王様お逃げください! 女王様ー!」



 アルウラネ達が慌てて逃げ惑い始める。しかし球根の根を使って地面を引きずるように移動している彼女達は見るからに足が遅い。

 途中で前のめりに転ぶ者まで居た。花を模したようなワンピースを着ている。

 エロチックな姿のアルウラネ達の中で、どうやらまだ一人だけ少女のアルウラネのようである。


「おい待てニロ。こいつらもう……」

「――。――。――。炎は雨となって降り注ぐ。エルプトバーニング」


 戦闘意思を放棄している彼女達を見てニロを止めようとするが、一瞬早く魔法は発動した。

 地面のあらゆる場所から火柱が立ち昇る。


「ひぃいいいい! か、体が……わたしの、から……」

「熱い、熱い! 誰か助けてぇ!」


 火山のように噴火した炎がアルウラネ達に降り注ぐ。

 一人は地面から噴出した火柱で、体を半分吹き飛ばされ、苦しみながら灰となってゆく。

 また一人は降り注いだ無数の炎で生きたままじわじわと体を焼かれてゆく。

 中には軽い火傷だけで生き残り、泣きながら地面を這って、ニロの足首を掴んで命乞いをする者も居た。

 それは転んでいた少女アルウラネだった。


「もう許して、怖いよ、熱いよ……わたし、人間襲うのこれが初めてなの……だから」

「黙れ魔物」

「うぐっ……ぎびぃいいいい!」


 少女アルウラネはニロによって口に杖を差し入れられると、そのまま魔法を放たれ、声にならない悲鳴を上げながら、顔中から火を噴き立たせ、地面を苦しそうに転がり回る。

 そのまま炎は顔から全身に広がり、やがて動かなくなった少女アルウラネは、静かに炭となって空中へ四散した。


「……わたしは言える立場じゃないけど……酷すぎる」

「えー? もう、エロ要因全員終了かよ、一匹ぐらいペットにしたかったな~」

「イオに関しては喜ばしい心境の変化だが、りっくんはちょっと黙っててくれ……ニロ」

「何?」

「何じゃない……やりすぎだ」

「相手は人間をいたぶり食い殺して来た外道」

「それでも逃げようとする相手まで殺すのは駄目だ。そうだなイオ?」

「そうね。最後の子、人間襲うの初めてだったみたいだし……」

「だそうだ。今度やったら問答無用で仲間から外す。いいな?」

「……了解した」


 渋々といった様子でニロは頷いた。

 彼女のした事は何も間違ってはいない。

 だが、俺とイオは確実に彼女を信じていいのか疑い始めていた。


○●○●○


「待て」

「ん……? あんたは?」


 森の中、道無き道を進んでいると、急に声を掛けられた。

 深い緑色のサラッとしたドレスを着込んでいる、魅力的な女性である。

 最初に出くわしたアルウラネとは違い、一目見ただけでは人間なのか魔物か判断出来ない。


「我が名はリフティル。この森を支配するアルウラネの女王だ」

「敵なの!? なんか普通に話しかけてくるから警戒心とかまったくなかったわ」

「それで正解だイオ。どうやら闘いに来た訳じゃないらしい」

「綺麗なねーちゃんだなぁ」

「ニロ」

「……ん。分かった」


 杖を構えていたニロを制する。辺りには他の敵らしき気配はまったくない。

 周りの木に巻きついている蔓が動いているのが気になるが、少し警戒するだけでいいだろう。


「何か話があるんですね?」

「この先には我が娘達が暮す古い遺跡しかない。先程の力も見せてもらった」

「そうですか……それで?」

「紅の魔女は火の精霊イフリートと契約せし人間。我らにとっては天敵。頼む、娘達だけは見逃してほしい、この命を好きにしてくれ」


 リフティルは両膝を折って頭を下げてきた。 



「俺達に危害を加えないなら無闇に命は取らないですよ。さっきはやり過ぎたと思ってます。ただし、二度と人間に危害を加えないと誓ってください」

「ああ……この命に掛けて誓う」


 口約束ではあるが、一つの種族の女王がプライドを捨ててまで頭を下げてきたのだ。

 ここは嘘だとしても信用してやるのが筋である。

 

「でも、その古い遺跡には用があるのよ。探してる秘宝はたぶんそこにあるわ」

「秘宝……もしや、遺跡の地下にあるあれか……?」

「心当たりがあるんですか?」

「我らは人間が捨てた遺跡に住んでいる。遺跡の奥深くにそれらしき物を見た」

「案内を頼んでも? あ。遺跡の場所とかは誰にも話さないですから、安心してください」

「信用しない訳ではないが……ここまで秘宝を運ぶ。どうかそれで手を打ってほしい」


 その言葉に、顔を上げてみんなを見る。

 危険が無いと判断したのか、全員頷いて返してくる。

 

「分かりました。お持ち頂いたら直ぐに森を出ます」

「じゃあ持ってきたら、俺から一つだけ条件を提示させて貰ってもいいか?」


 急にりっくんが手を上げて話しだした。

 何事かと、みんながりっくんを注目する。


「その……条件とは?」

「ねーちゃんの大事な娘に酷い事する条件とかじゃないから、安心してくれていいぞー」

「よかろう……信じる。では、運んでくる」


 リフティルは頷くと、木の上から降りてきた蔓を片手で持ち、引っ張られるようにして上空へと消えた。


「りっくん、一体何をさせる気なんだ?」

「ああ、これにサインさせようと思ってなー」

「これは……審判の契約書じゃない。どうしてこんな物を?」


 りっくんが差し出した丸められた羊皮紙の紐を解いて、イオが不思議そうな顔をする。

 武器にはランクが存在する。ランクが高いほど威力が高くなり、丈夫さも高くなる。

 本来それは自由に人に貸したり、別の武器や品物と交換できたりする。

 強い武器を初心者に貸したとして、持ち逃げを禁止するのが、審判の契約書である。

 もし返却を拒否して逃げ出そうものなら、審判の雷が落ちて行動不能に追いやられる。


「エターナルシールドに使っても意味が無い」

「ちょっと違うなニロ。まっ、ねーちゃんが戻ってきたらわかるさー」


 意味有り気に言うりっくんは、鼻歌を歌いながら羽根ペンを手に、楽しそうに契約書に何かを書き込んでいる。

 不思議に思ってそれを暫く見ていると、ガサササッという音が木の上から聞え、葉っぱが数枚落ちてきた。

 

「待たせたな、恐らくこれが探している秘宝だろう」


 蔓と共に木の上から姿を現したリフティルは、青銅色の丸い盾を持っていた。

 盾の中心にある丸いくぼみには、大きな真珠のような物がはめ込まれている。


「受け取れ」

「おお……これは……」


 受け取ると、ずっしりとした重さを両手に感じる。大きさは差ほど巨大ではない。

 腕に装着するタイプの物らしく、裏にはわっかが三個ほど並んでいる。

 本物かどうかみんなに見せようとすると、エターナルシールドは青い輝きを放った。

 輝きを放ちながらエターナルシールドは、りっくんの右腕へと瞬間移動する。


「わっ!? ひゃーびっくりしたー、なんか冷たいぞこれ」

「水晶玉から水? なんだ?」

「水の属性を感じる。恐らく水の精霊ウィンディーネの加護」

「えっ? 秘宝って精霊の加護を持ってるの? 知らなかったわ、じゃあこれも?」

「そう。イオのエターナルアーマーは光の精霊オベロンの加護」

「精霊は武器や防具に宿る物なのか……ん? まてよ。じゃあその杖まさか」

「イコクが予想している通り。この杖は火の精霊イフリートの加護を受けている」


 ニロは杖を見せてくる。

 どう見てもその辺の武器屋にありそうな、ボロい木の杖である。


「いやいやいや。全然そうは見えないけど秘宝だったのかよ。どこで手に入れた?」

「ハイマン家の子女に代々伝わる家宝」

「女系一家なのかー! 御婿さん大変そうだなー」

「りっくん、それ今は割とどうでもいい。どうして黙ってた?」

「聞かれなかった」


 こんなボロい杖を秘宝だと思う者はまず皆無だと突っ込みを入れたい。

 何はともあれ、これで秘宝は三個という事だ。

 あとは俺と、まだ見ぬ五人目の仲間を含めて二つである。 


「さてーじゃあ契約書のサインしてもらうぜー」

「それが条件なのだな? 分かった……っ! おい人間の男……これは、この内容で間違いないのか?」

「間違いないぜー! ほら。早くサインしてくれ」

「しかし……これは」


 契約書に目を通していたリフティアが、顔を上げて動揺した様子になる。

 何かとんでもない事が書いてるのかと、りっくん以外の全員が、彼女の隣に移動して契約書を覗き込む。

 そこにはこう書き記してあった。


 “アルウラネの女王リフティアとその娘達は、天使リベルに命を預ける事をここに誓う”


 りっくん以外の全員が絶句した。そして冷たい視線をりっくんに送る。

 恐らくレベル的にはりっくんよりも、リフティアが上だろう。貸し出す条件は問題ない。

 問題は命を預けるという文章。

 貸し借りが物以外の形の無いものに及ぶのかは不明であるが、もし借りに命を形にして預けるとしたら、りっくんはその命が形になった物を壊すことで、彼女達全員を殺してしまうことも可能になる。

 審判の契約書は返却を進言してから、相手に五分間の猶予を与える。

 返却の取り消しもこの五分間である。

 リフレティアが契約書にサインした場合、もしもりっくんがこう言ったとする。


「返せとか言ったらこの命を破壊するからな、だからエロことさせろー! げへへへへ!」

「ううっ……分かりましたリベル様、だからどうか娘達は……あっ……」


 下卑た顔のりっくんに、泣きながら押し倒されるリフティル。

 ぽたりと牡丹の花が落ちる場面が想像できた。

 

「りっくん……まさかそこまでとは、親友だと思っていたのに、俺は恥ずかしい」

「抵抗出来ない女に、あ、あんなことや、こ、こんな事をするつもりなのね! 最低!」

「……女の敵」

「みんな酷くねっ!? そうじゃなくて、預けた命は人に渡したり人が壊したり出来なくなるだろ?」

「あ……まさかりっくん」


 命が破壊不可能になる。

 つまり、りっくんが壊さなければアルウラネ達の安全が保障されるのである。


「そうそう。アルウラネ達は二度と人間を襲わないけど、それを知ったら問答無用で倒そうとする奴らも出てくるだろ?」

「では……これは我らを護る為に……何故そのような……」

「ん~……理由とか考えたこと無いなー。ただ俺は……」


 気がつくとリフティアは契約書を両手で握り締めたまま俯いていた。

 その肩は震えている。

 泣いている誰かを見た時、俺の親友がする事は一つである。


「あんた達と友達になって一緒に遊びたいかな」


 りっくんはポンッとリフティアの肩に右手を置いて笑う。


「う……うあぁ――」


 顔を上げたリフティルはりっくんにしがみ付いて大きな声で泣いた。

 大事な娘を殺された彼女が、女王としてのプライドを捨てて頭を下げた。

 どんなに辛いことだっただろう。りっくんは耐えていた彼女の心を見透かしていたのだ。


 


「うひょー! おねーさんの胸が当たるー! これ最高だぜーいっくんー!」

「ごんな、胸でよければ、いぐらでもー! うあ゛あ゛あ゛ん!」

「そういうのがなければ完璧なんだけどな……女王様は顔面崩壊してるし、ははっ」

「ぷっ……何よ締まらないわねー、あはははっ!」

「ふふっ……変な人」


 みんな俺に釣られてが笑い出す。あの無表情のニロまでも軽く笑顔を見せている。

 大丈夫。例えニロがこの先どうなっても、りっくんが助けてくれる。大丈夫。

 

(葵さん……どうしたんだろう。まだ連絡がないなんて……何もなければいいけど)


 安心しながら、俺はふと葵さんの事を思い出していた。



…………。

…………。

……。


「かはっ……ま、ちなさい……」

「くくくっ……これがエターナルの制覇者クリヤマスターとはな。どんな気分だ? 恋人を奪われて、そうして地面に這い蹲る気分はよぉ!」


 病院の屋上。水を溜めるタンクの上で、紫髪の青年は女を見下ろしていた。

 青年が肩に担いでいるのは、もう一人の青年、未だに目を覚まさない女の愛しい人である。

 女はなんとか立ち上がると、男を睨みながら口を開いた。


「いっくんは渡さない……もう少し、もう少しで、いっくんは戻ってくるのよ、邪魔はさせない! ああああああああああ!」


 女は咆哮と共にその姿を変えた。

 夜空が明るく輝き、光が一つの柱となって女の体に降り注ぐ。

 光が収まり、現れたのは白い翼を持つ天使である。


「いっ……くんを、かえせぇえええええええええ!」

「くくくっ、ははははは! そうじゃないと面白くないよなぁ! エターナルの破壊者・・・、イオ=アーストラヴァァァァアアアアア!」


 空高く飛び上がった天使と、不気味に笑う悪魔にも似た青年が、空中で激しくぶつかりあった。


 眠り続ける俺の側で、隠されていた時が……動き出そうとしていた。

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