町へ
【踏みにじれ。過ぎた時間と信頼を。絆破りし光よ。ゲッシュブレイク】
俺の指先から出た光線は、一メートルほど進んで消える。
【喰らい尽くせ。欲望のままに生きるもの。出でよ我が従僕。サモンビースト】
足元から影が溢れ出し、獣の形になる。
その姿は漆黒の狼。
一メートル超の全長を持ち、口からは鋭い牙が顔を覗かせている。
残りの二つの魔法を試してみた。
ゲッシュブレイクは魔術的な意味合いのある契約を破棄するものだ。
光の当たった相手が結んでいる契約を強制的に解除する。
サモンビーストは漆黒の狼を呼び出し、使役する。
ただし頭が悪いので、簡単な命令しか理解できず、強さは一定で成長する事もできない。
以上が現在俺が使うことのできる魔法の全てだ。
ゲッシュブレイクは何かに使えそうだが、戦闘では役に立たないだろう。
ダークプリズンなんて無限ポーチと性能が被っているせいで完全に要らない子扱いだ。
つまり現状、戦闘に使えるのはサモンビーストだけ。
まぁ、見た目はかなり強そうだしなんとかなるんじゃないだろうか。
簡単な命令しか理解できないって所に何かしらフラグがたっているような気もするが。
まぁ、 戦闘の手段も確保したしこれで俺も戦って生きていけるだろう。
ならまずは町へ行こう。
そろそろ日も暮れてきたし、休みたい。
夜営の道具はあるけどやり方は知らないし町にいくのが一番だ。
夜営のやり方の知識も女神から与えられてはいるんだろうけど、少なくても今日はもう頭を痛くしたくない。
幸い最初の知識を手に入れたときに最寄りの町の位置もわかっている。
歩いて二時間ほどの場所だ。
そうだ、せっかくだからサモンビーストに乗っていこう。
呼び出してから放置していた狼を近くへ呼び、背に手をのせ話しかける。
「さぁ、町へ行こう!」
「がおんっ!」
やっと役目が与えられたせいか狼は嬉しそうに吠え、猛然と町に向かって走り出した。
・・・・・・俺を残して。
「ちょっ、待て! 俺を乗せていけ!」
次回はやっと町での話になります。
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