ギルド2
「依頼じゃなくて冒険者の登録に来ました。後、俺は男です」
性別を訂正しつつ、用件を伝えると受付のおっさんは怪訝な顔をする。
「登録ぅ? 剣の一本も持っていない癖にか? しかもまだ小さいじゃないか、悪いことは言わないからあきらめて家に帰ったほうがいいぞ」
武器装備できないからしょうがないんだよ!!
俺だってできるなら剣を振り回したかったさ。
「武器は持っていますよ」
無限ポーチの中から剣を出して見せる。
「常に武器を身につけておかないような奴がやっていけるほど冒険者は甘くないぞ。出直してこい」
おっさんは注意してくるが、そもそも武器を身につけていても俺は使えないから的外れな忠告だ。
「剣はあまり使わないから仕舞っていただけですよ」
実際は全く使えないんだが。
「剣を使わない? じゃあなんだ全身にナイフでも仕込んでるのか?」
「いえ、拳で戦います」
正確には装飾品で強化した拳だけどな。
武器が使えない以上それしか方法がない。
負の魔術は珍しいというか世界で唯一の系統のはずだから隠し技として秘密にしておこう。
「・・・・・・」
おっさんが呆けた顔をしている。
「どうかしましたか?」
「今、何で戦うって言った?」
「拳で」
「そんなもんで戦えるわけがないだろうが!!」
おっさんが唾を飛ばしながら叫ぶ。
俺はあわてて唾をよけながらおっさんに反論する。
「戦えますよ、いいじゃないですか拳で。ギルドの規定で拳で戦ってはいけないとか書いてあるんですか?」
「書いてはいねえけどよ・・・・・・、さすがに明らかに戦えそうもない奴をギルドに入れるわけにはいかねぇんだよ。一応戦闘能力の試験はするが少しも戦えない奴だと試験で死んだりもするから、誰でもホイホイ試験を受けさせるわけにはいかねぇって事情があるんだ」
ギルドに入るために試験があるのか。
「しかもおまえさんぐらいの年齢だとある程度強くないとギルドには入れられねぇんだ」
「年齢が関係あるんですか?」
「あぁ、子供だと依頼をしてくれた依頼人が不安に思うからな。その不安を取り除くためにもそれなりの強さをもってなくちゃいけねぇ」
逆に大人だと大した試験も受けずにギルドに入れるんだがなとおっさんは続ける。
理由は納得できるが、めんどくさい制度だ。
若ければ若いほど実力を要求されるだなんてなんという鬼畜設定。
「ちなみに、俺が入るにはどれ位の実力が必要なんですか?」
「冒険者ランクでCランクは必要だな」
異世界物の小説でありがちな冒険者ランクが存在するらしい。
しかし具体的にCランクがどれくらいの強さなのかがわからん。
「Cランク?」
「あぁ、冒険者として一人前だといわれるランクだな。ちなみにランクはSS、S、A,B,C、D、E,Fの八種類存在して、SSから順に実力がある。ついでに冒険者としての利点、たとえばギルドカードが身分証の代わりになるなどはCランク以上から適用される」
「試験に合格したら、いきなりCランクになれるんですか?」
「合格できたらな。まぁまず不可能だろうし、下手したら死ぬがな」
ふむ、丁度いいな。
この世界を旅したかったから身分証は欲しかった。
それが実力さえあればいきなり手に入るんだから。
「じゃあ試験をお願いします」
「話聞いてたかお前? 無理だし死ぬかもしれないんだからやめておけ」
このおっさんうるさいな、心配をしてくれてるのは分かるんだけど。
どうしたものかと悩んでいると先ほど俺の前におっさんと話していた女性が大きな声で言った。
「話は聞かせてもらったわ!」
・・・・・・いや、あなた俺が話し始めた時からおっさんの横にいたからね?
聞かせてもらったも何もないと思うんだけど。
俺が白い目で見ているのにも気がつかず、女性はフフンとか聞こえそうなほどとっても得意そうな顔をしていた。