宿屋へ
門番のオッチャンと別れアルゲイトの町を歩いている俺は今、めちゃくちゃハイテンションだ。
中世ヨーロッパ風の建築物(正式名称は忘れた)の数々や猫や犬の獣人等の亜人の人々。
これらを見て、興奮するなっていうのは無理な話だ。
ワクワクが抑えられない。
そもそも抑える必要があるだろうか、いやない!
生まれてから初めてかと思える程のハイテンションで歩きまわると、いつの間にか広場にたどり着いた。
広場ではいくつもの露店商がひしめき合っている。
感覚としてはフリーマーケットに近い。
多くの人は敷物の上に幾つもの商品を乗せて売っている。
日用品から武器や防具など色々な物を売っているようだ。
「おう、そこの嬢ちゃんご機嫌だね。この髪飾りを買わないかい? 嬢ちゃん可愛いから安くするよ」
露店の一つから声をかけられた。
しかし、また女の子に間違われた。
俺の顔はよっぽど女顔らしい。
この顔にした女神に軽いレズ疑惑を抱きつつ、露店の店主に答える。
「俺は男です」
振り返ると気の弱そうな顔をしている。
扱っている商品を見ると、日用品のようだ。
「そ、そうか。すまないね。お詫びに安くするから、何か買っていかないかい?」
顔に似合わず、商魂はたくましいようだ。
とは言っても、正直日用品のほとんどは無限ポーチの中に入っていたから必要ない。
なかったのは食べ物ぐらいだが、ここには売ってない。
それなら。
「お詫びでしたら良い宿屋を教えてくれませんか?」
そういうと店主はにっこりと笑って、
「何か買わないかい。安くしとくよ」
繰り返しやがった。
知りたかったら何か買えと?
こいつ、気が弱そうなのは見た目だけだ!
しょうがないから並んでいる財布をひとつ掴んで相手に差し出した。
「まいど。銅貨二枚になります」
俺は憮然とした表情をしながらポーチに手を突っ込み、銀貨を一枚渡した。
残り所持金は銀貨五十九枚だ。
だいたい銀貨二枚あれば、よっぽど高級な宿じゃない限り食事つきで宿泊できる。
「はい、銅貨九十八枚のお返しだ」
ちなみに全ての硬貨は百枚で次の硬貨になる。
硬貨の種類は、白金貨、金貨、銀貨、銅貨で白金貨から順番に価値が高い。
「オススメの宿屋はこの先の大通りをまっすぐいって右手に見えてくる二番目の宿屋だよ。もうそろそろ良い時間だし、急いだ方がいい。かわいい看板娘もいるから人気があるんだ。下手したら泊まれなくなる」
・・・・・・いい買い物だった。
いや、違うぞ。
看板娘に惹かれた訳じゃないからな。
全然、せっかく異世界に来たんだからかわいい女の子と会いたい何て考えてないからな?
店主に礼を言い宿屋の名前も聞いた後、心なしか早歩きで宿屋に向かう。
後ろの方で店主が笑っている気がしたけど気にしない。
店主に教えてもらった宿、渡り鳥の巣に到着しカウンターへと向かう。
「すいません。泊まりたいんですが部屋空いていますか?」
俺の声に反応して下を向いて何かをやっていた少女がこちらを向く。
「はいっ、空いていますよ。最後の一部屋です。お客さん運がいいですね」
そういって無邪気な笑顔を向けてくれる少女は赤い髪と青い瞳を持った美少女だった。
体つきも少女から女性へと移り変わる間でとても魅力的だ。
俺はしばらく呆けたように見ていたが、声をかけられて我にかえる。
「あの、私の顔に何かついてます?」
「い、いえ。何でもありません」
さすがにあったばかりの人に見とれていたなんて言えるわけがない。
いや、けどすごいな異世界!
まさかこんな美少女がいるなんて。
「そうですか。では何泊泊まります?」
「とりあえず一週間でお願いします」
「はい。では銀貨十枚になります」
値段もなかなか安くてかわいい女の子もいる。
これはかなり良い宿屋かもしれない。
ありがとう店主!
その後、いくつか宿屋の説明を受けて部屋へ案内された。
鍵をかけ、ベッドに横になると異世界の初日で疲れていたのか、晩飯も食べずに眠ってしまった。
あまり文章量を増やせませんでした。
これから徐々に増やしていきたいです。
読んで頂きありがとうございます。
時間がありましたら感想評価などお願いします。