門番
「ストーップ!」
俺の指示を受け狼が爪で地面を削りながら止まる。
俺をおいていった狼を呼び戻し、その背に乗り走らせて三十分。
今は町から二百メートルほど離れた地点だ。
狼に乗ったわりに遅いと思うかもしれないけど、しょうがないんだ。
だって全力で走らせたら俺が落ちた。
しかも狼の野郎、俺が落ちたのに気がつかないでそのまま駆け抜けやがった。
その後、また呼び戻してゆっくり走らせたら三十分かかったというわけだ。
・・・・・・ゆっくり走らせるというニュアンスが通じる事を信じてる。
そんなわけで大分町に近づいたんだが、狼に乗ったまま町に行く訳にはいかないだろう。
警戒されたり、攻撃されたりしそうだからな。
というわけで狼から降りる。
「ありがとうな。また今度頼むぜ」
狼はがおんと一声嬉しそうに鳴くと徐々にからだが薄れ、消えていった。
俺はそれを見届けた後、町に向かって歩き出した。
「ん? 嬢ちゃん、見ない顔だな」
町の入り口までたどり着くと、門番をしていたオッチャンが話しかけてきた。
オッチャンの言語に合わせて返事をする。
「俺は男です」
そう答えてから、そういえばこの体になってから性別を確かめてないと思い、慌てて確認した。
ほっ、良かった男だ。
「そうかい、そいつは悪かったな」
ガハハと笑いながら、オッチャンは言う。
豪快だが、なかなか気の良さそうな人だ。
「旅の途中で立ち寄ったんですが、町に入ってもいいですか?」
門番がいるってことは入るのに身分証か何か必要なんだろうか。
だとしたら困ったな、そんなもの持ってないぞ。
過保護な女神がポーチに入れている可能性もあるけど。
「おう。入れ、入れ。たいした町じゃないが、楽しんでいってくれ」
しかし、予想に反してオッチャンから許可がおりた。
そのあっけなさに思わず問いかけてしまう。
「身分証を出したりとか、お金を払ったりとかしないんですか?」
俺の質問にオッチャンは笑う。
「王都じゃあるまいし、そんなことはしねぇよ。そんなことをしたらあっという間に過疎化しちまう」
そんなもんなんだろうか?
少しこの町の税制や治安が心配になったものの、余計なお世話だと思い考えないことにした。
「そうなんですか、わかりました。教えてくれてありがとうございます」
「いいってことよ。じゃあ、入りな」
言われた通りに門をくぐった俺ににオッチャンが声をかける。
「ようこそ交易の町、アルゲイトへ」
読んで頂きありがとうございます。
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次回からは一話の文少量をもう少し増やしたいと思います。