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四角と魔王バルバロッサ

作者: 夏ヶ辻真島
掲載日:2026/01/27

「まっすぐ私の目を見て言ってちょうだい」

「無理だ、断る」

「聞こえない」

「ムリムリムリムリ」

「あー聞こえない」

 耳を塞ぐ仕草をする目の前の女ーー苗字が四角。

 四角って結構可愛い苗字だ。

「ビンタするぞ」

「え、やだ」

「やっぱ聞こえてるじゃん」

 めんどくさい。こいつは、非常に面倒くさい女だ。

「なあ四角。四角は、可愛いんだからさ、俺みたいな冴えない男はやめておいた方がいいよ」

「だって好きなんだもん」

「だから断ったでしょ。はい、もう終わり。四角は振られたの。回れ右して帰って」

「いやだいやだ!」

 はあ、塾の時間、間に合うかなあ。

「つかまり立ちしたばかりの赤ん坊じゃないんだからさ、しっかり自分の足で立ってくれよ」

「お姫様抱っこ」

 こいつスピーカーみたいに声がでかい。

「ここ学校。場所をわきまえてくれよ」

「じゃあうちに」

「行かないよ。一人で行って」

 ああ、イライラしてきた。

 深呼吸だ。

 ここは大人の対応で、

「日をあたらめてくれたら」

「いやだ」即答。

「キスして」

 四角はツンツンとほっぺを指差す。

「アメリカでは普通だよ」留学生かよ……。

「四角が英語喋れるなら、アメリカとみなしてキスしてあげるよ」

「Is that true? I'm happy.(それは本当? 嬉しいわ)」

「I have to walk the walk.(有言実行しなくちゃ)」

「えへへ。嬉しい」なんか四角から色気が出てるーー

「意外だよね、英語が喋れるなんて。」

「そんなことないよ。四角は可愛いし頭もいいんだね」

 聞いちゃいねえ。

「ねえ、何語が喋れたら次は唇にしてくれる?」

「アセンブリ言語」

「何それ? 中東の言語?」

「さあ。自分で調べてくれ。そろそろ塾に行かないと……おい、腕が千切れる」

「自分が喋れない言語はなしだからね」

「じゃあ、厨二病語」

「やってみて」

「我が名は魔王バルバロッサ、闇の力を手に入れし者よ」

「プークスクス」

 こいつ笑うと可愛いな。


 


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