四角と魔王バルバロッサ
「まっすぐ私の目を見て言ってちょうだい」
「無理だ、断る」
「聞こえない」
「ムリムリムリムリ」
「あー聞こえない」
耳を塞ぐ仕草をする目の前の女ーー苗字が四角。
四角って結構可愛い苗字だ。
「ビンタするぞ」
「え、やだ」
「やっぱ聞こえてるじゃん」
めんどくさい。こいつは、非常に面倒くさい女だ。
「なあ四角。四角は、可愛いんだからさ、俺みたいな冴えない男はやめておいた方がいいよ」
「だって好きなんだもん」
「だから断ったでしょ。はい、もう終わり。四角は振られたの。回れ右して帰って」
「いやだいやだ!」
はあ、塾の時間、間に合うかなあ。
「つかまり立ちしたばかりの赤ん坊じゃないんだからさ、しっかり自分の足で立ってくれよ」
「お姫様抱っこ」
こいつスピーカーみたいに声がでかい。
「ここ学校。場所をわきまえてくれよ」
「じゃあうちに」
「行かないよ。一人で行って」
ああ、イライラしてきた。
深呼吸だ。
ここは大人の対応で、
「日をあたらめてくれたら」
「いやだ」即答。
「キスして」
四角はツンツンとほっぺを指差す。
「アメリカでは普通だよ」留学生かよ……。
「四角が英語喋れるなら、アメリカとみなしてキスしてあげるよ」
「Is that true? I'm happy.(それは本当? 嬉しいわ)」
「I have to walk the walk.(有言実行しなくちゃ)」
「えへへ。嬉しい」なんか四角から色気が出てるーー
「意外だよね、英語が喋れるなんて。」
「そんなことないよ。四角は可愛いし頭もいいんだね」
聞いちゃいねえ。
「ねえ、何語が喋れたら次は唇にしてくれる?」
「アセンブリ言語」
「何それ? 中東の言語?」
「さあ。自分で調べてくれ。そろそろ塾に行かないと……おい、腕が千切れる」
「自分が喋れない言語はなしだからね」
「じゃあ、厨二病語」
「やってみて」
「我が名は魔王バルバロッサ、闇の力を手に入れし者よ」
「プークスクス」
こいつ笑うと可愛いな。




