第9話 バズるタイトル術
停滞期をどうにか抜け出そうと、私は必死にあがいていた。
毎日更新を続けても、数字はほとんど動かない。
ブックマークは一向に増えず、感想も沈黙。
「このままじゃ埋もれて終わる」
そんな焦燥感が胸を締め付けていた。
ある夜、私はランキング上位作品を眺めながら、ふとあることに気づいた。
――タイトルだ。
上位に並ぶ作品はどれも長く、説明的で、しかもインパクトがある。
「一目見ただけで内容がわかるタイトル」ばかりだった。
その瞬間、私は理解した。
「タイトルが弱いままでは、読まれるはずがない」。
■ タイトルは看板
小説において本文はもちろん大事だ。
だが、本文を読んでもらう前に必要なのは「クリック」だ。
クリックしてもらわなければ、どれほど内容が優れていても存在しないのと同じ。
そのクリックを左右する最大の要素――それがタイトルだった。
私はこれまで「雰囲気がかっこいい」ことを基準にタイトルをつけていた。
だが、それは完全に自己満足だった。
ランキングを眺めれば一目瞭然。
読者は「何が起こる物語なのか」を瞬時に理解できるタイトルに惹かれているのだ。
■ 人気タイトルの研究
私は人気作のタイトルをノートに書き出し、分析を始めた。
「追放」
「無能」
「実は最強」
「婚約破棄」
「悪役令嬢」
「スローライフ」
「チート」
これらのワードは驚くほど高頻度で使われていた。
しかも複数を組み合わせているケースも多い。
「追放されたけど実は最強でした」
「婚約破棄された悪役令嬢が辺境でスローライフ」
どちらも、一読するだけで「物語の方向性」がわかる。
しかも、読者の欲望をくすぐるキーワードが詰め込まれている。
私は衝撃を受けた。
これまで「簡潔でかっこいいタイトル」にこだわっていた自分が、いかに読者目線を欠いていたかを思い知った。
■ タイトルを変える勇気
私は悩んだ。
「今さらタイトルを変えても意味があるだろうか?」
「むしろ、既存の読者が離れてしまうんじゃないか?」
だが、冷静に考えれば既存の読者は数えるほどしかいない。
それよりも「これから出会う読者」のほうが圧倒的に多いのだ。
意を決して、私はタイトルを変更した。
短く地味だった題名を、長く説明的なものに変えた。
たとえば――
「無能スキル【パン焼き】で追放されたけど、辺境で作ったパンが世界を救う話」
自分でつけながら、正直少し恥ずかしかった。
だが、それと同時に「これなら読者に伝わる」という確信もあった。
■ 劇的な変化
タイトルを変えた翌日、私は信じられない光景を目にした。
PVが倍になっていたのだ。
ユニークも急増し、普段なら30人程度だった訪問者が70人を超えていた。
「……本当にタイトルだけで、ここまで変わるのか?」
思わず何度もリロードした。
だが数字は消えない。
確かに、タイトル変更は大きな効果をもたらしていた。
その日、私ははじめて「ブックマーク1」を手に入れた。
読者が「続きを読みたい」と思ってくれた証。
それは、タイトル変更が読者との縁を繋いでくれた瞬間だった。
■ タイトルは物語の第一話
この経験から学んだことがある。
**「タイトルは本文の外にある第一話」**だということだ。
タイトルで「おもしろそう」と思わせなければ、ページを開いてすらもらえない。
逆に、タイトルが強ければ、それだけで読者を呼び込める。
本文がどれほど秀逸でも、タイトルでスルーされれば存在しないに等しい。
だからこそ、タイトルは妥協してはいけないのだ。
■ 今日のまとめ
タイトルは「読者を本文へ連れていく扉」
人気タイトルには定番ワードが盛り込まれている
タイトルを変える勇気は、新しい読者と出会う第一歩
タイトルは本文の外にある「第一話」
停滞期を抜け出す鍵は、予想もしなかった「タイトル」にあった。
数字が伸びないときこそ、視点を変えることが大事だと学んだ。
PVもブックマークも増えた今、次に目指すのは――
「1000PV突破」。
そのために私は、さらに更新を加速させることを決意した。