第4話 初めての読者コメント
「なろう」の仕組みを調べ、成功している作家を研究した。
やるべきことは見えた。だが――数字は依然として冷たかった。
PVは少しずつ増えていた。
一話投稿すれば10、二話目で20、三話目で30……積み重ねれば確かに動く。
だが、ブックマークはゼロのまま。
感想欄は白紙のまま。
「本当に誰か読んでいるのだろうか?」
そう思うたび、心のどこかで孤独が広がった。
■ コメント欄を覗く日々
ランキング上位の作品を読むと、感想欄が盛り上がっていた。
「最高でした!」「続きが気になります!」
時には数十件ものコメントが並び、まるで作者と読者が一緒に作品を育てているように見えた。
羨ましかった。
自分も、そんなやり取りをしてみたかった。
「読んだよ」と誰かに言ってもらえたら、どれほど心強いだろうか。
けれど現実は、感想欄に「0」の文字が並ぶだけ。
まるで扉が閉ざされているかのように、誰も書き込んでくれなかった。
■ その瞬間は突然に
ある日、仕事終わりにスマホを開いた。
通知の欄に、見慣れない赤い印がついていた。
――「感想が投稿されました」。
心臓が跳ねた。
指先が震え、まともに操作できない。
慌てて感想ページを開いた。
そこには、たった一行の文字があった。
「面白かったです!続き楽しみにしてます!」
たったそれだけ。
だが、その短い一文は、私にとって宝物だった。
思わず画面を抱きしめ、涙がにじんだ。
「……読んでくれてる。本当に……」
ゼロから始まった私にとって、それは初めての「声」だった。
孤独な海を漂っていた小舟に、灯台の光が差し込んだような気がした。
■ 一行の力
人は不思議だ。
たった一行の言葉で、こんなにも救われるのかと思った。
もし「つまらなかった」と書かれていたら、私は立ち直れなかったかもしれない。
けれど、その一言は紛れもなく「応援」だった。
私は急いで返信を書いた。
「感想ありがとうございます! とても励みになります!」
指先が震えて、誤字だらけになりそうだった。
けれど、心からの言葉を返した。
■ 心境の変化
その日を境に、私は変わった。
これまで「数字」にばかり囚われていた。
PVがいくつだ、ブクマが増えない、ユニークが少ない――。
数字が心を押し潰す日々だった。
だが、読者の一言があれば、それだけで戦える。
「読者は数字ではなく、人だ」
そう思えるようになった。
PVの裏側には、確かに誰かがいる。
画面の向こうでページを開き、読んでくれている人がいる。
そう考えるだけで、孤独は和らいだ。
■ 二つ目の声
数日後、二つ目の感想が届いた。
「主人公の心情描写が好きです」
今度は少し長い文章だった。
私の作品の、具体的な部分に触れてくれていた。
「この人は本当に読んでくれたんだ」と胸が熱くなった。
同時に、「自分の強み」を初めて知った。
私は自分の作品を「下手だ」「つまらない」と思い込んでいた。
だが、誰かに「ここが良い」と言ってもらえた瞬間、その部分が光り出したのだ。
「読者の言葉は、作者の鏡だ」
そう強く感じた。
■ 今日のまとめ
感想欄が白紙でも、諦めずに書き続けることが大事
たった一行の「面白かった」で心は救われる
数字ではなく、人が読んでくれていると実感できる
読者の言葉は、自分の強みを映し出す鏡になる
初めてのコメントは、私にとって人生の宝物になった。
孤独な執筆の日々に、一筋の光をもたらしてくれたのだ。
そして私は決意した。
「もっと読者と繋がりたい。もっと感想をもらえるようになりたい」
そのために、次は「小さな実験」を始めることにした。
数字を動かし、読者を増やすための試みだ。