第3話 成功している作家を研究
「なろう」の仕組みを一通り理解した私は、次のステップに進むことにした。
それは――成功している作家の研究である。
どれほど努力しても、独学では限界がある。
ならば、すでに結果を出している人のやり方を真似すればいい。
私はそう考え、ランキング上位の作品を片っ端から読み、投稿履歴をチェックし、X(旧Twitter)での宣伝方法までも調べ始めた。
■ 上位作家の共通点
調べていくうちに、驚くほど多くの「共通点」が見えてきた。
タイトルが長い
「追放されたけど実は最強でした」
「悪役令嬢だけど辺境でスローライフ」
ぱっと見て内容がわかり、しかもインパクトがある。
私の短くて抽象的なタイトルは、そもそも読者の目に止まっていなかった。
更新頻度が高い
毎日更新、時には一日二回更新している人もいた。
読者にとって「続きがすぐ読める」ことは最大の魅力らしい。
一話あたりの文字数が安定している
大体3000~5000文字前後。
長すぎず短すぎず、読みやすいボリュームで統一されていた。
私は毎回バラバラだったので、これでは読者が「読みにくい」と感じても仕方なかった。
キャッチコピー・あらすじが強い
上位作品はあらすじの時点で心を掴む力があった。
「読まなければ損だ」と思わせる勢い。
それに比べ、私のあらすじは日記のように淡々としていた。
つまり――私の作品は「最初の一歩」で読者を掴む力が決定的に欠けていたのだ。
■ 宣伝の工夫
さらにSNSを調べると、多くの作家が積極的に「宣伝」を行っていた。
ただリンクを貼るだけではなく、こんな工夫があった。
「最新話更新しました!」だけでなく、内容を一文で要約して興味を引く
ハッシュタグを活用して、ジャンルに興味のある層に届くようにする
イラストやキャラ紹介を混ぜて投稿し、ビジュアルでもアピール
中には「ランキング入りしました!ありがとうございます!」と数字を報告している人も多かった。
それを見た他の読者が「お、人気なんだ」と思い、さらに読者が集まる――まさに成功のスパイラルだった。
私は愕然とした。
自分は「作品を投稿すれば、いつか誰かが気づいてくれる」と思っていた。
だが、実際には「気づかせる努力」をしていなかったのだ。
■ 読者目線で考える
研究を続けるうちに、もう一つ大切なことを学んだ。
成功している作家は、常に読者目線で作品を作っている。
例えば、主人公の設定。
追放・無能・スキル持ち――すでに定番のパターンだ。
「使い古された設定」と言ってしまえばそれまでだが、なぜか飽きられない。
その理由は、読者が「こういう展開を読みたい」と望んでいるからだった。
つまり、作者が書きたいものだけを書くのではなく、読者が求めるものを織り込む。
そのバランスを取っている人が上位に残っていた。
私は作品を見返し、頭を抱えた。
「完全に自己満足で書いていたな……」
心に刺さる恥ずかしさと同時に、改善すべき点が山ほどあると実感した。
■ 研究の副作用
ただ、研究には副作用もあった。
上位作家の圧倒的な実力や人気を見せつけられると、どうしても自分との落差に打ちのめされる。
「自分はこんな風に書けない」
「今さら真似しても遅い」
そんな弱音が頭をよぎる。
だが、私は思い直した。
「完璧に真似する必要はない。ヒントを自分なりに取り入れればいい」
私はプロではなく、まだゼロから這い上がろうとしているだけの存在だ。
ならば、まずは「基礎」を学び、少しずつ形にしていけばいい。
■ 今日のまとめ
上位作家の共通点は「長いタイトル」「高頻度更新」「文字数の安定」「強いあらすじ」
宣伝は「工夫」と「読者への見せ方」が重要
成功している人は読者目線で物語を作っている
比較して落ち込むのではなく、自分に取り入れることが大事
この研究で私の中の霧は少しずつ晴れていった。
「やるべきこと」が具体的に見えてきたからだ。
そして次の目標は――
「初めてのブックマークをもらうこと」
そのために、私は小さな実験を始めることにした。