第2話 なろうの仕組みを調べる
PVが「ゼロ」から「1」になったあの日から、私の意識は大きく変わった。
これまでの私は「小説を投稿すれば、いつか誰かが読んでくれるだろう」と漠然と考えていた。
だが、たった一人の読者が現れた瞬間に理解した。
「ただ待っていても駄目だ。仕組みを知らなければ戦えない」。
ここから私は、「小説家になろう」という舞台を徹底的に研究することにした。
作品を読んでもらうために、まずは「どうすれば数字が動くのか」を知らなければならない。
■ PVとユニークの違い
最初に気づいたのは、「PV」と「ユニーク」の違いだ。
PVはページビュー。つまり「開かれた回数」だ。
同じ人が何度読んでも、そのたびにカウントされる。
一方でユニークは「訪問者の人数」。
一人が何度読んでも「1」として数えられる。
つまり、PVが100でもユニークが10なら、10人が10回ずつ読んでくれた計算になる。
逆にPVが100でユニークが100なら、100人が1回ずつ覗いたことになる。
この数字の差を見れば、「どれだけ熱心な読者がついているか」が見えてくる。
私は自分のページを眺めて、PV5・ユニーク1という数字に苦笑した。
――きっと最初の読者が何度も読み返してくれたのだろう。
そう思うと、胸がじんわり温かくなった。
■ ブックマークの重さ
次に注目したのは「ブックマーク」だ。
ブックマークがつくとランキングに反映されやすい。
ただのPVとは違い、「この作品を続けて読みたい」という意思表示だからだ。
私は人気作品をいくつも眺めて気づいた。
ランキング上位の作品は、例外なくブックマーク数が多い。
そして、それが雪だるま式に増えていくことで、さらに人の目に触れる。
つまり、最初の数人に「ブクマしてもらえるか」が勝負だ。
ゼロから一歩抜け出すためには、この壁を突破しなければならない。
■ 感想とレビューの存在
さらに、「感想」や「レビュー」も重要だ。
だが、これは初心者にとって非常にハードルが高い。
なぜなら、感想やレビューは「よほど面白い作品」にしか書かれないからだ。
読者が時間を割いて文章を残すというのは、それだけエネルギーのいる行為だ。
私はあるとき、感想欄が大盛り上がりしている作品を見た。
そこには「次はどうなるのか気になって眠れない!」や「キャラが最高!」など、作者を励ます言葉が溢れていた。
正直、羨ましくてたまらなかった。
だが同時に、「自分もいつかこうなりたい」と強く思った。
■ タグの力
そして、初心者にとって一番わかりやすいのは「タグ」だった。
作品を探す読者は、まずタグで検索する。
異世界転生、婚約破棄、ざまぁ、追放、スローライフ……
人気タグに入っていなければ、そもそも目に触れる機会すらない。
私は自分の作品のタグを見返した。
「オリジナルファンタジー」「剣と魔法」――悪くはないが、地味すぎる。
これでは検索しても埋もれてしまうのは当然だった。
人気作品を分析した結果、私はタグの付け方に法則を見つけた。
「検索されるワードを素直に入れる」
それが基本だった。
■ 更新時間の魔法
もう一つ重要なのは「更新時間」だ。
なろうには、ランキング集計のタイミングがある。
特に「日間ランキング」は、集計直後に新規投稿が載りやすい。
私はある日、夜の23時半に作品を更新した。
すると翌朝、PVが一気に跳ね上がっていた。
「なるほど……これが時間帯効果か!」
投稿するタイミング一つで、数字が倍以上変わる。
これを知らずに更新するのは、武器を持たずに戦場に行くようなものだった。
■ システムは敵ではなく味方
こうして調べていくうちに、私は思った。
「なろうの仕組みは、初心者を弾くための壁ではなく、理解した者を後押しする仕組みだ」
PVやユニークは現状を可視化する。
ブックマークは応援の証になる。
タグは作品を見つけてもらう入口。
更新時間はタイミングを計る武器。
全てを使いこなせば、ゼロからでも登れるはずだ。
■ まとめ
PVとユニークで「読者の熱量」が見える
ブックマークが増えなければランキングに入れない
タグは「検索されやすさ」が命
更新時間を意識すれば伸びやすい
システムを理解すれば、無名でも勝負できる
数字に心を折られかけた私だったが、研究を通して「まだ戦える」と確信した。
そして私は、新たな目標を胸に誓った。
――次は「初ブックマーク」をもらう。
ゼロを一歩超えた先に、必ず道は開けるはずだ。