表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライブ配信で始まった関係は、本物になれるのか  作者: 宮野ひの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/85

第81話 しちゃった<井戸川萌子side>

『鈴加のファーストキスを奪っちゃったので、もう二度と仲直りできないかもと思っていたのに……急展開! 本当、人生って何が起こるかわからないですねっ』


 山崎美音は弾んだ声で、話を続けた。


 えっ? えっ?


 今確かに、目が覚めるようなワードを言ったよね?


「——な、なんて?」


『だから——』


 山崎美音は流暢に、もう一度、最初から話してくれた。


 初——の部分は、聞き間違いではなかった。

 私と来那がまだ踏み入れたことのない世界を連想させる言葉を、彼女は確かに口にした。


『鈴加って、実は私のこと好きだったんですねっ。えへへっ。夢みたいっ! あっ。女の子同士だから別に痛くなかったですよー』


 眠気が宇宙まで吹き飛んでしまった。


「どうなったら、そういうことになるの!?!? というか、山崎美音と三笘さんは付き合っているの!?!?」


『大きな声、出さないでくださいよー。まぁ。今のところ、私達の関係に名前はないですねーっ。でも、今日もデートする予定ですっ! ……あっ。もうこんな時間。そろそろ準備しないと! 先輩達、またねっ』


 電話は一方的に切れてしまった。


「……どういうこと?」


 来那も混乱したままだった。


 話を整理してみると、山崎美音と三笘さんは、恋人同士にはなっていないものの、その……しちゃったということだった。


 この前までは絶交していたのに。

 あまりに唐突で、むしろ美しいとさえ思った。


「うーん。まぁ、でもそういうこともあるの……かもね? えっと……先越されちゃったねっ」


 私を試すような目で見つめた後、そっとほっぺにキスをされた。

 朝なのに、なんだか来那は色気があって——。

 その、もしかして、私たちも——!?


 ——と思ったけど、来那はベットからすんなり出て、伸びを一つした。


「そろそろ準備しないと、朝ごはんの時間に間に合わないよっ」


 そのままキャリーケースの方に向かい、中を開けて、メイク道具を取り出した。


 ベッドに一人取り残された私は、呆気に取られて動けなかった。


 朝ごはんなんか食べなくても、もう少しこのままでいたい——。


 昨晩、気持ちを言葉にして伝えることの大切さを学んだけど、これはちょっとやっぱり……言えなかった。恥ずかしいからっ!


 そんな矛盾を抱えたままの自分に気合いを入れるように、頬を軽く叩き、私も静かにベットを出た。





 ホテルの朝食会場には、ビジネスマンや家族連れ、男女のカップルたちの姿があった。

 それでも、なんとなく意識が向いてしまうのは女子二人組だった。楽しそうにおしゃべりをしながら朝ごはんを食べている。

 二人のスマホケースには、男性アイドルの写真が挟まれている。いわゆる"推し"ってやつなのかな。きっと二人は友達同士だろう。

 ……私と来那は周りからどう映っているんだろう。恋人同士に見えるのかな。


 朝食はビュッフェ形式だった。さすが北海道。イクラが乗った海鮮丼もあった。


 各々好きなものを取ってから、来那と向かい合い、「いただきます」と声をそろえた。

 ポーカーフェイスを気取っているけど、私の頭の中は、山崎美音と三笘さんのことだらけ。ぐるぐると思考がとらわれてしまっていた。


「……初めてだぁ」


「えっ?」


 来那の言葉にドキッとして、思わず聞き返してしまう。


「——こんなに新鮮なサーモンを食べられるなんて。初めて!」


 彼女は頬を押さえて、海の幸を堪能している。


「よ、良かったね」


「ふふっ。わたしも、萌子同様、初めてのことがあったら、どんどん宣言していくからねー」


「……」


 意識しすぎなのかな。


 確かに私にとって、初めての飛行機であり、家族以外との初めての旅行でもあった。

 そして、初めてキスをした相手は来那なわけだけど——。


 私は、さっきの山崎美音の初——につられて、「初めて」という単語に敏感になっていた。


 ぶんぶんと小さく頭を振る。

 しっかりしないと!


 今日は、バスで支笏湖(しこつこ)に行く予定だ。

 2日目も来那と一緒にいられるなんて、嬉しい!

 私はあらためて旅行の偉大さを噛み締めることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ