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ライブ配信で始まった関係は、本物になれるのか  作者: 宮野ひの


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第75話 北海道旅行スタート!【吉瀬来那side】





<吉瀬来那side>



 窓の外には、どこまでも雲のじゅうたんが広がっていた。機内は静かで、エンジン音だけがゴウンと響いている。


「もう、大丈夫だよ」


「……本当?」


 隣には、目を閉じている萌子がいた。


 汗ばんだ手が、わたしの手を離さない。彼女の緊張が伝わってきて、わたしはそっとその手を強く握り返した。


「良かった……」


 萌子がホッと胸を撫で下ろす。

 なにせ彼女は、初めて飛行機に乗ったということだった。


 離陸直後は顔色が悪かったが、今はほんのりと頬が色づいていた。


 ——本当に二人で北海道旅行に来れちゃった。しかも、たっぷり2泊3日で。


 高鳴る鼓動が、身体の隅々にまで響いていた。


 萌子はモダンな黒いワンピースに青色の薄いカーディガンを着ていた。髪が一つにまとめられていて、いつもと違う様子に調子が狂う。


 学校で隣同士のわたし達は、飛行機でも隣同士に並んで座っている。

 ふふっ。

 ふと、そんなことを考えては、笑みが溢れた。


「なに?」


 萌子が眉を下げて、顔を覗き込んでくる。


「なんでもないっ」


「えー」


「ふふっ」


 ——そんなカップルっぽいやり取りが楽しかった。


 この頃、萌子は山崎を構うことが多いから、一緒にいる時間が取れなかった。

 どうやら彼女のマンションに行って、ライブ配信のアドバイスをしているようだった……。


 ……。


 別にいいんだけどねっ。

 放課後にクラスの人と話してても、宿題をしていても、萌子のことが気になって仕方なかった。


 今日からの2泊3日は、萌子を独り占めにできる。

 ……いいよねっ。


「……鼻歌うたってる?」


 萌子がそんなことを言った。

 やばっ。無意識だった。わたし、きっと誰よりも浮かれている。


 少し落ち着こうと、目を閉じて萌子の肩にこてんと頭をつけた。

 昨夜は楽しみで眠れなかったせいか、手を繋いだまま、つい甘えてしまった。


「……あらあら」


 CAさんが通ったタイミングで、そんな言葉が聞こえたような気がした。


 今、高度何千メートルなのかな。……わからない。

 そんな空の上では、誰の目も気にすることなく、ふたりきりでいられた。





 スプーンを手に取る前から、スパイスの香りが鼻先をくすぐる。鮮やかな赤褐色のスープの中、彩り豊かな野菜が見え隠れしている。その中で、ひときわ存在感を放っているのが骨つきチキンだった。


 まずはスープを口に運ぶと、旨みの中にじわじわと辛さが追いかけてくる。ご飯との相性も最高で、食べる手が止まらなかった。


 わたし達は、飛行機を降りた後、電車で札幌駅に移動をした。

 北海道に来たらスープカレーを食べるって、萌子と前から決めていたんだ。


「美味しい!!」


「ねっ。初めて食べた」


 普通のカレーとは全然違う食感で、スープカレーにはちょっと驚かされた。

 チキンはスプーンを入れたら柔らかくほぐれていく。


 美味しそうに食べる萌子を見て、愛おしい気持ちが湧き上がる。

 甘いものが苦手な彼女だけど、辛いものは好きなんだ。

 わたしは一つずつ、萌子のことに詳しくなっていく。





 食べ終わって店を出ようとしたとき、財布を取り出しかけたわたしを、萌子がそっと止めた。


「大丈夫。今回の旅行は、私が全部出すから」


「……」


 今回の北海道旅行は、わたしと萌子がフタコンで頑張った成果として実現したものだ。


 ……わかってるよ! わかってるけど、でもなんかこれって……。

 ヒモ彼女のようじゃない!?


 萌子はパンパンに膨らんだ財布を取り出す。(……現金主義なんだ!)


 店員さんから見たら、わたし達はどういう風に見えているんだろう。

 恋人はおろか、いじめっ子といじめられっ子とかに見えてるんじゃないよね!?


 少し体裁が気になってしまった。

 わたしは居心地が悪い中、萌子の後ろにじっと佇んでいた。





 気を取り直して、次は予定通り、動物達とふれあえるのが売りのテーマパークに向かった。

 中でも注目なのは、園内にキツネとふれあえるエリアがあるということだった。


 今回の旅の、目玉イベントと言っても良い!

 スケジュールの関係で、初日に組み込んでいた。


「か、か、かわいい……!」


 目の前には、モフモフのキタキツネがいる。

 萌子に頭を撫でられて幸せそうだ。目を細めて、うっとりとしている。


 萌子の顔もとろんと、とろけている。……良かった。

 ここに連れてこられて本当に良かった!


 しみじみと思っていたら、「来那も触りなよ」と声をかけられた。


「……じゃあ失礼しまーす」


 私が手を伸ばそうとしたら、さっと避けて、キツネはどこかに行ってしまった。


 あ、あれー?


 ぽつんと二人取り残される。


「……ごめん」


 少し泣きそうになる。嫌われちゃったのかな。


「きっと、来那がかわいすぎて、びっくりしたんだよ」


 キューン!!!!

 気まずい雰囲気を打破するセリフだった。


 も、萌子ーーー!!!!


「あっ。黒いキツネもいるね。ギンギツネだ」


 萌子が構わず奥の方に進んで行く。すかさず、わたしもついていく。待ってよー!

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