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ライブ配信で始まった関係は、本物になれるのか  作者: 宮野ひの


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第5話 また来ます!

『ひっ……』


 歌い終わったいどっちは、か細い声を漏らしていた。


 何かあったのかな?


『ら……ライライちゃん。は、初めまして。ゆっくりしていってね。ふ、フォローもありがとう!』


 キラライブでは、ライブ配信にお邪魔したらユーザー名が、コメント欄に自動で表示される。いどっちはわたしの名前を呼んでくれた。


 それから彼女は、歌っている間に更新されたコメントを順番に読み上げていく。


【歌、とっても上手でした!】


 わたしもすかさずコメントを打った。


 コメントを読むときに、彼女の照れている様子が伝わってきた。


 その後ハートのアイテムを使って、感謝の気持ちを伝えた。


『ら、ライライちゃん、ありがとう……』


 先ほどの歌っているときの優雅さは何処に。いどっちはモジモジしていた。

 なんだか、かわいいギャップがある人だなぁ。


 もう一度、いどっちのプロフィールを見る。

 ——あれ。気づいたことがあった。


 いどっちが既にわたしをフォローしていた。初見なのに既に相互フォロー!? なんで!? 


 わたしは中学の頃、この「ライライ」のアカウントでライブ配信をしていた。フォロワーは420人いる。

 ライバーは引退したけど、同じアカウントのままリスナー側として使っていた。


 ……もしかして、いどっちって昔わたしのリスナーだった人かな?


 だけど過去を振り返ってみても、何も思い出せない。

 うーん。偶然、配信を見にきてくれた人で、なおかつフォローもしてくれたのかな?


 まあ。深く考えてもしょうがない!


 わたしは、そのままスルーすることに決めた。


 ふと周りを見たら、ファーストフード店の席が混み始めていた。

 いけない。わたし一人で独占するのはマナー違反だ。そろそろ帰ろう。


 わたしは急いで、いどっちに【また来ます!】とコメントを打って退出した。


 外も暗くなってきたし、早く家に帰ろうっと。

 トレーに残ったポテトを口に入れた後、オレンジジュースを勢いよくすすった。





 次の日。教室に入ると、朝比奈(あさひな)さんから一番に声をかけられた。


「来那ちゃん、おはよう!」


「おはよう、朝比奈さん!」


「席後ろの方になったんだよね。いいな〜」


「いいでしょ。手紙とか回しても見つかりにくいよ」


「え〜。私の方まで回せる?」


「今度、試してみよっか!」


「ふふっ。楽しみにしてる〜」


 軽く手を振り、自分の席に行くと、隣には既に井戸川さんがいた。


 早いなぁ。いつも何時くらいに来ているんだろう。彼女は黙々と本を読んでいた。


「おはよう、井戸川さん!」


「……」


 無言。……さすがのわたしも心が折れる。

カバンをゆっくりと机の上に置く。とほほ。


「……おはよう」


 そしたら少し遅れて、挨拶が返ってきた。良かった。無視されたわけじゃなかった。


 現金なものだ。数秒前まで凹んでいたのに、挨拶を返してくれたとわかると、ホッとして顔がゆるんだ。


「何の本、読んでるの?」


 つい調子に乗って話しかけてしまう。井戸川さんの本には紙のカバーがかけられていた。


「……秘密」


「そ、そっか」


 ——会話終了。


 でも、読書中に邪魔したわたしが悪い! それに誰にだって、知られたくないことはあるしね。


 そのまま椅子に座ると、井戸川さんが「ねぇ」と、話しかけてくる。


「どうしたの?」


「いや、そういうんじゃないんだけど——」


 目線が泳いで、口ごもっている。


「?」


「えっと……」


 そんな井戸川さんをよそに、彼女の机に目を向けると、昨日、興味を持ったペンケースが置いてあった。もちろん、キツネのマスコットキーホルダーも付いている。


 あっ。そっか。


 昨日、ライブ配信アプリで、キツネのイラストのサムネイルに興味が出たのも、この影響があるかも。

 潜在意識?というものに残って、ついタップしちゃったのかな。


 一人、合点がいって嬉しくなる。


「——って、聞いてる?」


 目の前には、怒った顔の井戸川さん。机の上には閉じた本が置かれていた。


 やばい。完全に意識が持っていかれていた!


「ご、ごめん」


「……はぁ。もういい」


 呆れられて、ため息をつかれてしまった。


 井戸川さんは、また本の世界に入ってしまう。


 本のカバーが少しずれていて、よく見てみたらタイトルが「秘密」と書いてあった。

 さっき「秘密」と言ったのは、内緒の意味じゃなくて、本のタイトルだったんだと気付いたけど、もう井戸川さんと目を合わせることすらなかった。

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