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ライブ配信で始まった関係は、本物になれるのか  作者: 宮野ひの


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第47話 手をつないで【吉瀬来那side】





<吉瀬来那side>



 ——フタコンが終わってしまった。結果は2位だったけど、とっても嬉しかった。


 井戸川さんと共に健闘した結果だと思うと感慨深いものがあった。

 わたしがライブ配信をしたときには感じたことのない熱意があった。


 目標があることで、こんなにも熱くなれるんだと、あらためて教えてもらった。まだ、体が震えている。


 ——それにわたしは今日、井戸川さんに告白をした。


 ライブ配信中に、好きという気持ちを伝えたくて、つい言葉にしてしまった。


 リスナーに【告白?】と言われて気づいた。

 わたしは、今以上に井戸川さんの近くにいたいんだ。特別になりたいんだ。

 これはきっと恋なんだと思う。


 そんなことを意識したら、密室に二人きりという状況がやけに気になってしまった。


「ねぇ」


 井戸川さんが、わたしに背を向けたままか細い声を出す。


「な、何?」


 つい声が震えてしまう。


「さっきのライブ配信での告白って——パーフォーマンスだった?」


 ……なんてことを言うんだろう。

 わたしは本気だったのに。


「違うよ」


 わたしは、はっきりと言った。


 あっ。もしかして——。

 一つ、思い当たることがあった。


 井戸川さんは、ライブ配信でしたことは本当のこととして受け取らない。

 キスもハグも、ライブ配信を切った後に、もう一度とねだられた。


「わたし、井戸川さんのことが好きだよ」


 "いどっち"ではなく、彼女の名前をしっかりと呼び、もう一度、気持ちを伝える。


 井戸川さんがくるりと振り向いた。


「も、もう一度言って」


「っ!!」


 は、恥ずかしい。

 だけど、拒む理由なんて、もう見つけられなかった。


「わたし、井戸川さんが……大好き!!」


「っ!!」


 彼女が顔を赤らめる。


「フタコンが終わってからも一緒にいたいなっ! その、わたしと付き合ってほ……」


 プルルルルルルル。


 そのとき、壁の電話がけたたましく鳴った。

 おそらく、退室時間が迫っていることを伝えるものだろう。


 井戸川さんが慌てて取り、応答をする。


 ま、間が悪い!

 わたしの人生初の告白が、こんな感じになるなんて……。


 井戸川さんが電話を切った後、もう一度仕切り直しをすることができるだろうか。


 彼女が電話を置くと、わたしの方をくるりと向いた。

 そして、いそいそと隣に座る。


「私も……」


 真っ直ぐに見つめられる。


「吉瀬さんが好き。ずっと前から好きだった」


「井戸川さん……」


「……私と付き合ってください」


「うん……!」


 井戸川さんから告白してくれた。わたしは胸がいっぱいになる。


 彼女がゆっくりと微笑む。

 見惚れてしまい、何も考えることができなくなってしまった。


 気がつけば井戸川さんが、おでことおでこがくっつきそうなほど近くにいた。わっ。

 あ、キスされる——そう感じた。


 目をギュッとつぶった後、優しく唇が触れた。


 幸福感に包まれる。ソファーに置いた手が、そっと握られた。

 もっと深く触れたいと思ったその瞬間、彼女は唇を引いた。


「……そろそろ退出の時間だから、急いで出ないとね」


 そんなことを井戸川さんが口にする。


 甘い雰囲気が終わり、距離を取られる。

 目が合わず、まるでわたしが井戸川さんを"井戸田"さんと間違って呼んだ、あの日のことが頭をよぎった。


 ——わたしはわたしに興味がない人が好きだった。


 だけど、今の井戸川さんも好き。

 耳が真っ赤になっている彼女を見て、クスッと笑う。


「萌子っ」


「わっ」


 つい、ガバッと後ろから抱きついてしまった。

 彼女は振り返り、わたしと目が合う。


「……来那、なに?」


「……!!」


 わたしの名前を初めて呼んでくれた。


 自然と口元が緩んでしまう。彼女の頬が恥ずかしさに染まる。


 リスナーのみんなには見せてあげない! わたしだけの井戸川さん。

 もっといろんな顔を近くで見たいな。


「ち、調子に乗らないで」


 ほっぺたにキスすると、"萌子"はわたしから距離を取る。

 切れ長の目で見下ろされた光景は、別に嫌なものではなかった。


 萌子はツンデレだと思う。もっともっとデレを引き出したいな……。


「な、何笑っているの?」


「なんでもないっ」


 そう言って、ソファーの上にあったカバンを取る。


「ほら、早く帰ろう?」


 萌子に向けて手を差し出した。彼女は戸惑っている。


「早くっ」


 強引に手を掴み、個室のドアを開ける。

空気がカラッとしていて、気持ちが良かった。


 わたしは萌子を振り返り、微笑んだ。わずかな間のあと、彼女の唇がゆるやかに笑みを描いた。

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