第46話 フタコンの最終結果<井戸川萌子side>
吉瀬さんと百合営業をしていると誤解されたあの日、彼は明らかに怒っていた。
その後、ぱったりと反応がなくなったため、てっきり私たちへの関心は失せたのだと思っていた。
——まさか、まだライブ配信を見続けてくれていたなんて。
【いどっちはライライが好きなんだろ?】
「……」
【二人が本当に仲良さそうだったから、これからも応援しようと思った矢先にこれかよ!】
「ハトゲッチュ……」
【俺はいどっちの配信をずっと見てきた! 本当に魅力的で素敵な人だと思ってたよ! だから"私なんか"なんて言うなよ!】
ハトゲッチュは私を励まそうとしてくれていた。
【そうだよ╰(*´︶`*)╯♡】
【いどっちが悲観的になる理由なんてないよ!】
【ライライちゃんのことが好きなんでしょ?】
リスナーのみんなの応援が、背中を押してくれる。
【そういえば、前に憧れのライバーさんがいてライブ配信を始めたって言っていたよね!】
【うんうん╰(*´︶`*)╯♡ きっと、それってライライちゃんのことだったんじゃない?】
【えっ。今こうして二人で配信してるのって運命的じゃない!?!?】
私の配信を長く見てくれているリスナーが、いろいろとコメントをしてくれる。
みんな、ありがとう。少しだけ照れくさかった。
【フタコン、まだ諦めんなよ!】
ハトゲッチュが、そうコメントした後——なんと高額のアイテムを何個も投げてくれた。
それに掻き立てられたように他のリスナーもたくさんのアイテムを使ってくれる。
鮮やかに染まる画面を見て、進めって言われた気がした。
「ありがとう。みんな……」
そうして私は吉瀬さんと向き合う。
「——私もライライちゃんが好き。ずっと前から好きだった」
「えっ。本当に!?」
そう言って、ギュッと私を抱きしめる。
「く、苦しいよ」
「だって、嬉しいから!」
彼女の香りに包まれて、まるで夢の中を漂っているみたいだった。
【あっ。あと5分でフタコン終わるよ!】
【みんなで力を合わせれば1位狙えるかも!!】
【がんばれー╰(*´︶`*)╯♡】
えっ。あっ……。
もう少しでフタコンが終わっちゃう。
私がリスナーのためにできることってなんだろう。
「——ねぇ、ライライちゃん、歌おうよ!」
「えっ?」
「最後に、リスナーのみんなに感謝の気持ちを届けたいの! だから、私たちが最初に歌った『ピーチ』をもう一度歌いたいな」
「……うん!」
思えば、吉瀬さんとフタコンに出ようと決めたのは、ちょっとしたハプニングがきっかけだった。
このカラオケの個室で、ライブ配信をしていたとき、ひょんなことから彼女が映り込んで——今ではこんなに仲良く配信するほどの仲になっていた。
あのとき歌った『ピーチ』を、今こうして二人で歌うことに、特別な意味があるように思えた。
手をつなぎながら、ありがとうの気持ちを一音一音に込めて、精いっぱい歌った。
——今までで一番盛り上がった配信になったと思う。
締め切り1分前には、ハトゲッチュがまたもや高額アイテムを連続で使ってくれた。
「3、2、1……」
「終了!」
【フタコン終わったーーーー】
【結果どうなったんだろう?】
【ラグがあるから1分後にわかるって!】
——こうして、フタコンが幕を閉じた。
吉瀬さんとリスナーのみんなで結果が出るのを祈るように待った。
【……いどっちとライライちゃんのペアは2位】
リスナーの一人がコメントで教えてくれた。
——そっか。2位だったんだ。
でも、順位が下がっていたのに、上位に食い込むことができてすごい!
これもリスナーみんなのおかげだ。頭が上がらなかった。
【1位は、るんちゃんところだって!】
やっぱり優勝は、るんさんと花先生のところかぁ。
残念だけど、納得感の方が強かった。
「……そっか。でも2位取れて嬉しい! みんな、ここまでついてきてくれて本当に本当にありがとう!」
「ありがとうねっ!」
二人して画面に向かってお辞儀をする。手はまだつながれたままだった。
【だけど、みんな一つになれた気がして良かったー】
【また、別のコンテストに出場してよ!】
【うんうん。応援するよ╰(*´︶`*)╯♡】
リスナーのみんながあたたかいコメントをくれる。
——私、ライブ配信を始めて良かったな。そんなことを心から思うことができた。
それからの配信はリスナーに感謝の気持ちを伝えることが中心になっていた。
「じゃあまたねっ」
「みんな、ありがとう〜」
キリが良いところで、カメラを切る。
静寂が二人の間に広がった。
カラオケのテレビ画面から流れる曲紹介の声が、まるで聞こえないかのようだった。




