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ライブ配信で始まった関係は、本物になれるのか  作者: 宮野ひの


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第45話 特別になりたい<井戸川萌子side>





 フタコン最終日。私たちはいつものようにカラオケ店にいた。休日で混雑していたが、思ったほど待たずに済んだ。

 偶然か運命か——吉瀬さんと初めて来たときと同じ個室に案内された。


 私と吉瀬さんは、ドリンクバーで同じオレンジジュースを注いだ後、部屋でライブ配信の準備を進めていた。


「やっぱり、るんさんが1位かぁ」


 フタコンの途中結果のランキングには、るんさんとお姉ちゃんペアが相変わらずトップにいる。

 私たちは6位……。

 このまま順位を覆せるだろうか。つい弱気になってしまう。


「わたし達も負けていられないねっ」


 吉瀬さんはどんなときも、笑顔を絶やさない。

 どんな壁でも軽々と超えてしまいそうなパワーがあって、隣にいる私まで元気づけられた。


 ——好きの気持ちがどんどん強くなっていくのが自分でもわかる。


「んっ? どうしたの」


「な、なんでもない」


 じっと見ていたからだろうか。声をかけられる。

 私は慌てて目を逸らした。


「じゃあ。そろそろ始めようか」


「うん」


 ——いま、私たちの配信がスタートする。





 二人でスマホの画面に映り込み、リスナーとおしゃべりしたり、歌ったりする。


 そこにいる全員で空気を作っていく感じが、なんだか好きだった。


 一人で配信していた頃にはなかったぬくもりを、彼女に教えてもらうことができた。


 吉瀬さんは、学校の子が配信に遊びに来ていることをわかっていながら、今日も私と手をつないでくれた。嬉しかった。


【仲良い二人。尊い╰(*´︶`*)╯♡】


【フタコンもいよいよ大詰めだね!】


【でも、このままだと負けちゃうかも……】


 リスナーのコメントを読みながら、自分たちの今いる順位を知る。

 4位だ……。


 締め切りまで残り15分。逆転を狙うには、リスナーに多くのアイテムを投げてもらうしかない。


 ——頼むことなんて、私には無理だった。

 だから、勝てなくても、それでいいと思っていた。


 隣を見ると、吉瀬さんがいてくれる。つないだ手にぎゅっと力が入る。


 吉瀬さんが私を見つめる。長い間、そうしていたように思う。


「——わたしね、いどっちが好き!」


「えっ」


 彼女はにっこりと笑う。

 勘違いしそうになるところをグッと堪える。


「……私も好きだよ」


「わぁ! それじゃ、両思いだねっ」


【えっ。なになに!】


【尊い╰(*´︶`*)╯♡】


【告白!?】


 リスナーも翻弄されている。


 吉瀬さんはそわそわと落ち着かない様子で、やがて決意を宿した表情を見せ、こちらに向き直った。


「——わたし、いどっちの特別になりたいなっ」


「と、特別!?」


「うん。一緒に配信できるだけで十分楽しいんだけど……たぶん、これ以上でも以下でもない関係なんだろうなって、思ってて……えっと」


 吉瀬さんは、まだ気持ちがまとまっていないように思えた。


【それってさ、付き合いたいってことじゃない!?】


 リスナーの一人が、そんなコメントをする。


「ええっ。そんなの、恐れ多いよ!」


 コメントを見た後、吉瀬さんはそんなことを言う。

 ……私のセリフだよ。


「でも、実はね、フタコンで優勝できたら、いどっちにわたしの想いを伝えようと思っていたの」


「えっ」


「リスナーを巻き込んじゃうし。卑怯かなって思っていたけど……あぁ、もう。難しいことを考えるのはやめる! 覚悟決めるね!」


 彼女は透き通った瞳を私に向ける。


「わたし、いどっちが好き! フタコンが終わってからも一緒にいたい。その、わたしと、つ、付き合ってくれませんか?」


 そんなことを、真剣な顔をしながら言う。


 ——パフォーマンスには見えなかった。


【キャーーーー!!!】


【マジ告白!?】


【╰(*´︶`*)╯♡╰(*´︶`*)╯♡】


 コメントも盛り上がっている……。

 心臓が速く脈打ち、ふわふわとした感覚になる。


 嬉しいのに——信じられない私がいた。


 ライブ配信中に言っているからかな?

 それとも、私の自己肯定感の低さが原因だろうか。


 心のどこかで吉瀬さんは私のことを好きにならないと思っていた。


「えっと……」


 みんなが私の返事を待っている。


「私なんかが、ライライちゃんと釣り合わないよ……」


 嬉しいのに、そんなネガティブな言葉が口をついてしまう。私の悪い癖だ。こんなときに臆病な一面が出てしまう。


【諦めるなよ!!!!!!】


 ひときわ力強いコメントが目に入った。


「ハトゲッチュ……」


 彼は、ずっと前から私を応援してくれているリスナーさんだ。

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