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ライブ配信で始まった関係は、本物になれるのか  作者: 宮野ひの


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第35話 ライブ配信での振る舞い方【吉瀬来那side】





<吉瀬来那side>



 井戸川さんが、やけによそよそしい。

 やっ、クールなのはいつものことなんだけど、なんか違和感があるというか、なんというか……。


 今日も放課後。井戸川さんと二人でカラオケ店にやって来ていた。

 昨日案内された個室とは違う場所で、スペースがやや狭かった。


 井戸川さんを横目で見ると、ソファーの端の方に座って、ドリンクバーの烏龍茶をちびちびと飲んでいた。


 ——もっと近くに来れば良いのに。


 こんなにあからさまに距離を取られると、さすがのわたしも凹んでしまう。

 昨日のLINEもなんだか素っ気ないような気がしたし……わたし何かしたかな?


 小さくため息をつき、目の前にあったオレンジジュースを飲む。

 よしっ。元気を出さなきゃ!


「井戸川さん、今日も頑張ろうね!」


「う、うん」


 視線が一瞬だけこちらに向けられて、すぐに逸らされた。

 わたしに興味なさげなところが、好奇心をくすぐる。


 井戸川さんって、わたしのことどう思っているんだろう?

 嫌いではないと思うけど——めっちゃ好きって感じでもないよね?


 井戸川さんが鳴海さん以外の誰かと一緒にいるのを、わたしは見たことがない。

 だけど、二人で話をしていたとき、彼女は肩の力を抜いていた。小さくおかしそうに笑っている姿を何度も見たことがある。


 井戸川さんにとって、鳴海さんは「めっちゃ好き」のカテゴリに入るんだろなぁ。


 なんか、悔しい。


 ——って、なんでわたしは井戸川さんのことをこんなに考えているの!

 今はフタコンについて考えなきゃ。


 空気を変えるようにと、口を開く。


「……ライブ配信についてなんだけど、どうしたらもっと放送が盛り上がるかなぁ」


 井戸川さんは物思いにふけるような様子を見せた。


「うん。それなんだよね……。きっと二人で歌を歌うだけじゃ、限界があるよね」


 烏龍茶が入ったコップをじっと見つめている。


「昨日、いろいろライブ配信を見て勉強したんだけど——」


 すごい。わたし、家に帰って爆睡していた。

 井戸川さんは研究熱心だ。尊敬する。


「"フタコン"って、そもそも二人で出ることに意味があると思うの。昨日の配信を見返しても、私と吉瀬さんが仲が良さそうなときに応援ポイントが上がっていたし——」


「うんうん」


「フタコンで上位になるためには、私たちがこ、コミュニケーションを取ったら良いんだと思う」


「コミュニケーション? それって具体的にどういうことかなぁ」


「そ、それは……」


 井戸川さんはくるっと振り返り、背を向ける。

 個室内は狭く、そんなにスペースはない。壁に当たりそうだった。


「ねぇ。井戸川さんこっち見てよ」


 落ち着いて話せなくて、思わず声をかけた。


 すると、意外にも素直にこちらを向いてくれた。


「それってさ、前にキスした——みたいなことも含まれる?」


 純粋に気になって聞いただけだった。


 だけど井戸川さん、恥ずかしがるかなと思ったのも事実で……。


「からかわないで」


 ピシャリと言われる。

 彼女はキッとわたしを睨みつけた。


「……ごめん」


 茶化すことができない雰囲気だった。


 反応がいちいちかわいくて、もっと近づきたくなるのに、肝心なところで距離を取られてしまう。


 でも、今回はわたしが悪い。だから、素直に謝った。


「……謝らないで」


「どうしろと!?」


 心の声が漏れた。


 井戸川さんがクスッと笑う。張り詰めていた空気が緩んだことを感じ取り、ホッとする。


「——でも、昨日のライブ配信は大成功だったじゃん? 今日もああいう感じでいいんじゃないかな。台本とかもなしでさ。もし何かあったら、そのときに考えようよ!」


 井戸川さんは少し黙り込んで考えたあと、「なるほど」と思ったのか、そっと頷いた。


 わたしは思わず胸を撫でおろす。


 話がまとまったところで、それぞれドリンクバーから好きな飲み物を取ってから、ライブ配信を始めることにした。


「よーし。今日も頑張るぞー!」


「あっ。レバニラくんだ! いつも来てくれてありがとう」


 リスナーが集まるまでの間、テンションを高めたり、喉のコンディションを整えたりしていた。


【Narumiさんが遊びに来たよ!】


 そのとき、一人のリスナーが配信にやって来た。


 なるみ……? 初めて聞くリスナーさんだな。


 ふと井戸川さんの方を見ると、目を丸くしていた。どうしたんだろう。


 けれど、動揺の色はすぐに消えて、あっという間にいつもの調子に戻った。


 ——その後はリスナーとやり取りを楽しんだり、歌を披露したりしながら、配信は順調に進行していった。


 でも、昨日に比べて人が少なくて、正直戸惑った。


「あっ。ライライちゃん、服にゴミ付いているよ」


「えっ。どこどこ?」


「ここ!」


 井戸川さんが、わたしの肩についた糸屑を取る。急に距離を詰めて、にっこりとかわいい笑顔を向けてきたから、思わずドキッとしてしまった。


「ありがとうっ」


 わたしは自然に彼女の手を取り、ギュッと握る。

 井戸川さんはというと固まってしまっている。


【わーーーーーーーー!】


【キャーーーー╰(*´︶`*)╯♡】


【ラブラブ(●´ω`●)】


 コメント欄は盛り上がっている。

 その中でもNarumiさんは、課金アイテムを爆投げしてくれている。

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