表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライブ配信で始まった関係は、本物になれるのか  作者: 宮野ひの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/85

第32話 愛の言葉<井戸川萌子side>

 へぇ。多種多様のいろんなイベントがあるんだなぁ。

 アプリ内で使える限定アイテムがもらえる気軽なものから、24時間のライブ配信が必要な上級者向けの本格的なイベントまで、さまざまだ。


「あっ。これいいんじゃない?」


「どれ?」


 吉瀬さんが自分のスマホを指差す。私は彼女に顔を寄せる。


「"二人でやってみよう!コンテスト"だって」


 イベントの概要を確認すると、二人一組でライブ配信を行い、より多くのリスナーから応援ポイントを集めたチームが勝利するという内容だった。そこまで厳密な決まりはなさそうだった。


「わたしたちにぴったりじゃない?」


「……そうかも」


 開催日は今日からで、締め切りはちょうど一ヶ月後に設定されていた。ベストタイミングだと思った。


「あっ。もう時間もないし、とりあえずライブ配信始めない?」


「待って待って、戦略とかは練らなくて良いの?」


 そんな気軽に始めても、勝てるものなのか自信がなかった。

 とりあえずライバルに、どういう人がいるのか調べたかった。


「こういうものは、やったもん勝ちだよ! ほらほら、スマホセットして」


「……」


 吉瀬さんって、本当にすごい。

 悩む前に、もう動いているんだもん。


 私は、まず考えてから納得して動きたいタイプだ。でも結局、考えすぎて動けなくなることも少なくない。


 ライブ配信をきっかけに、明るい吉瀬さんから良い影響を受けられそうな気がした。


「どもー! ライライだよっ」


「い、いどっちです……」


 私たちは隣に並び、さっそくライブ配信を始めた。イベントには既に参加済みだ。


「ちゃんと映ってるかなー? レバニラくんいらっしゃい!」


 常連リスナーを筆頭に、次々に入室してくる人が現れる。


【二人ともかわいい!】


【高校生?】


【フタコン参加するのー?】


 続々とコメントが書き込まれる。


 リスナー一人ひとりに対応していると、時間はどんどん過ぎる。なんだか歌っている余裕はなさそうだ。

 課金アイテムを使ってくれるリスナーも多かった。


【ってか、二人距離あるね】


【ケンカしてる?】


【仲良くして……】


 確かに、私と吉瀬さんには不自然な距離があった。

 画面の端と端にいる。これじゃ、喧嘩してると思われるのも無理はない。


「そんなことないよー!」


「きゃっ」


 吉瀬さんが突然私の肩を掴んで、抱き寄せた。急な展開に気持ちが落ち着かなかった。


【わーーーー!!!!】


【╰(*´︶`*)╯♡】


【キターーーーー・:*+.\(( °ω° ))/.:+】


 コメントが急速に流れて、追えなくなってしまう。

 ハートがモチーフのアイテムを、リスナーがたくさん使ってくれた。


「わたし達、めっちゃ仲良いからー!」


 頬と頬がくっつくほどの距離だ。

 画面の中の私は目が泳いでいた。


「は、離れてよっ」


 いどっちとして配信しているからには、愛想良くした方が良いはずなのに……。

 耐えきれずに、吉瀬さんに冷たい言葉を放ってしまう。


「ちぇー」


 彼女は泣き真似をしてみせる。


【尊い╰(*´︶`*)╯♡】


【ずっと見ていたい!】


【いどっちライライちゃんコンビ推しです!!!!!!】


 いつもよりもコメント数が多かった。

 にぎわいの理由は、きっとイベントにあるのだろう。


 吉瀬さん——ライライちゃんは、明るくてノリが良い。

 柔軟性が高く、ライバーとしての適正がある。

 あぁ。そんな彼女だから、私は憧れたんだ。——好きになったんだ。


【ライライちゃん、俺に愛してるって言ってー】


 そうこうしているうちに、リスナーの一人がライライちゃんにファンサを求めた。


「特別だぞー! あ・い・し・て・る!」


 パチンとウインクつきだ。

 共鳴するかのように、画面にはキラキラとエフェクト付きのアイテムが舞った。


 ……他のリスナーに対して、愛しているなんて言わないでほしい。

 隣にいる私を見てよ。


 つい、歯ぎしりをしてしまう。


【いどっち、どうしたの?】


【顔、怖いよ(T ^ T)】


【スマイルスマイル!】


 い、いけないいけない。


 私は今、"いどっち"だ。

 井戸川萌子としての裏の顔を見せてはいけない。


「いどっち」


「えっ?」


 吉瀬さんは私の顔をじっと見つめる。

 な、なになに?


「……愛してるよ!」


「!!!!」


 胸がいっぱいになる。吉瀬さんがにっこり笑って、私にだけ愛の言葉を囁いてくれた。

 ふにゃりと力が抜けてしまう。


【わーーーー!!!!!!】


【キターーーーー(°▽°)】


【ごちそうさまです╰(*´︶`*)╯♡】


 コメントは大盛り上がり。


 こ、これをフタコンが終わるまで続けるの?

 私、身が持つのだろうか。


 ——その日のライブ配信は大成功に終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ