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ライブ配信で始まった関係は、本物になれるのか  作者: 宮野ひの


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第25話 アイテムのお返しとカラオケ<井戸川萌子side>





<井戸川萌子side>



「吉瀬さん、なんでこんなに高いアイテムを投げてくれるんだろう……」


 ライブ配信が終わり、私は一人、自室にいた。

 ベッドのふちに腰掛けて、スマホを見る。


 ライライちゃんは今日、4,000コインもするアイテムを投げてくれた。


 嬉しいけど——申し訳ないという気持ちの方が勝っていた。


 高校生からしたら4,000コインなんてほんと大金だ。


 ……。


「吉瀬さん、私のこと好きなのかな」


 ぽつりと呟く。


 すぐにブンブンと頭を振った。


 いやいや。そんなわけないって!


 吉瀬さんが、私の歌を気に入ってくれるのはわかる。

 でも、私という人間まで好いてくれるなんて、そう簡単に考えていいことじゃない。


 それに、吉瀬さんは、るんさんの配信を見ているとも言っていた。


 ——どんな人か気になった私は、スタバの帰り道、すかさずチェックしたのだ。


 ちょうどライブ配信をしていて、覗いてみたら、素直で愛嬌のある子だなと思った。

 ——私とは正反対。


 吉瀬さんは毎日欠かさず、私の配信に遊びに来てくれる。【ライライさんが遊びに来たよ!】の表示を見ると、安心する。


「……アイテムのお返ししたいなぁ」


 さすがに、このまま何もせずに4,000コインを受け取るのは気が引けた。


 前はスタバのギフトカードをプレゼントした。

 そしてひょんなことから、一緒にスタバに行くことにもなった。


 今回は、何をお返ししよう。

 ……。どうしよう。思いつかない。


「そうだ」


 明日、吉瀬さんに直接聞いてみようかな。


 ライブ配信でだったら、素直に話せるのに、顔を合わせたら、テンパって気の利いた話題一つすら出てこない。


 今のうちから話すことを決めておくと、落ち着いて話せる……気がする。


 そう決めた私は、ふーっと息を吐き、ふかふかのベッドに倒れ込んだ。





「わ、私とカラオケに行きたいの?」


「うん。ダメかな」


 翌朝。教室で隣の席の吉瀬さんに声をかけた。


 昨日の配信でアイテムをくれたお礼の話をきっかけに、今欲しいものがあるかどうかという話題にうまくつなげられた。


 最初こそ吉瀬さんは、「えー。何もないよ! 気持ちだけで嬉しいよ」と言った。しかし、数秒黙り込む。


 顔を上げて、私をまっすぐ見ながら、「井戸川さんとカラオケに行きたいなっ」なんてことを言ったのだ。


「えっと……」


 正直、恥ずかしかった。


 カラオケに行くということは、生歌を吉瀬さんに披露しなくてはならないということだ。


 ライブ配信や、空き教室ですでに歌を披露しているから、今更悩むのもおかしな話かもしれない。


 でも、カラオケって密室で、二人きりのまま長い時間を過ごすことになる。

 すごくドキドキしてしまって、即答できなかった。


「いどっち、お願い!」


 吉瀬さんは私のハンドルネームを言いながら、両手を合わせて懇願するようなポーズをした。


「ちょ、その名前で呼ばないで!」


 やっぱりリアルで呼ばれると恥ずかしい!


「いどっち、いどっち、いどっち……」


「も、もう」


 吉瀬さん、ふざけているなぁ……。


 顔が赤くなる。ごほんと咳払いをする。


「……しかたない。良いよ。カラオケに一緒に行くくらい」


 そんなかわいくない発言で、了承してしまった。

 吉瀬さん、呆れただろうか。


 ちらっと視線を向けると、彼女は笑っていた。


「やったぁー! じゃあ、今日行かない?」


 まるでそこに花が咲いたようだった。


「……今日は無理かな。17時から配信で歌枠をする予定になっているから」


「じゃあさ、その配信をカラオケでするのはどう? わたし、部屋の隅の方にいるし!」


「えっ」


 吉瀬さんは胸の前で手を合わせ、輝くような瞳でこちらを見つめてくる。


 か、かわいい。


 どうしようかなと思っていたら、


「いどっち、いどっち、いどっち……」


また、吉瀬さんが、私のハンドルネームを呼んできた!


 も、もう……。


「……静かにして。わかったから!」


「やったー!」


 吉瀬さんは私の手を取りギュッと握って喜びを伝えてきた。

 咄嗟の行動に、うまく反応できない。


「なになに?」


 吉瀬さんの声を聞きつけて、諏訪部さんが私達の元にやってくる。


「ラブ! へへん。井戸川さんと放課後、カラオケに行くことになったんだ〜。いいでしょ」


「えぇ。いいなぁ。楽しそうじゃん!」


「ひひっ」


「ねぇ、それ私も行っていい?」


 諏訪部さんは、人差し指を唇に当てて、私の方をじっと見る。

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