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ライブ配信で始まった関係は、本物になれるのか  作者: 宮野ひの


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第21話 何でそんなこと知っているの!?【吉瀬来那side】





<吉瀬来那side>



 井戸川さんとは、毎朝学校で顔を合わせたら「おはよう」と挨拶する仲だ。

 ……だけど、それ以上の会話はしない。


 確かに、わたしは井戸川さんから「嫌い」と言われた。

 中には、それから「何それ?」と怒って無視する人もいるだろう。


 だけど、わたしはそんなことはしたくなかった。


 むしろ、冷たい井戸川さんに興味があった。何でそんなにツンツンしているのか、隣の席にいると、ひたすら彼女に興味が湧いた。


 いどっちのライブ配信を毎日見ているからこそ、自然と好感を持てているのかもしれない。


 ライバーとリスナーのわたしたちの関係は良好だ。コメントを打ったら優しい対応を返してくれる。


 学校では見せないような笑顔を、画面越しに向けてくれるギャップが新鮮で面白かった。


 そんな裏の一面を知っているからこそ、嫌いになれなくて……むしろ好きになってしまうのだろう。


 それに、いどっちは顔出し配信に切り替えてから多くのファンがついた。【かわいい】【彼氏になりたい】みたいなコメントも目にする機会が増えた。

 わたしは、そんなコメントを目にする度に、胸がちくりと痛んだ。


 いどっちは怒ることなく、笑顔でスルーする。

 嫌なら、はっきりと言ってほしい!


 そんな優しい対応だと、勘違いする人も現れるんじゃないかとヤキモキした。


 だけど、わたしがコメントをするときは、ほんの少しでも長く目に留めてほしかった。……わがままだよね。


 みんなのいどっちだから、そんなことは叶わない。

 けれど、ほんの1秒でも、わたしだけを見ているように思わせてくれる瞬間があった。

 この空間は魔物だ。気づいたら、ズブズブハマってしまいそうな感覚がある。





 教室に入ると、井戸川さんはすでに席についていて、隣には鳴海さんが立っていた。二人で話していたみたいだった。


「おはよう!」


 努めて明るく挨拶する。


「あっ、吉瀬さんおはよう! 今日暑いね」


「本当だね〜。井戸川さんもおはよう」


「おはよう……」


 井戸川さんは、か細い声でそう言った。


 鳴海さんは用が済んだのか、そのまま自分の席に戻った。わたし達だけが、ぽつんと取り残されていた。


「……」


「……」


 き、気まずい。


 ええいと、口を開いた瞬間、井戸川さんが「あの……」と話しかけてきた。


「えっ。なになに?」


 動揺して、変な声が出てしまった。


「……もしよかったら、これいる?」


 井戸川さんは机の中から何かを取り出した。見てみると、長方形のカードのようなものだった。


「スタバのギフト……」


「ええっ。そんなの貰えないよ!」


 わたしは誕生日でもない。彼女にプレゼントを貰える理由もわからずに困惑する。


「……おととい、ライブ配信で高額アイテムを投げてくれたでしょ? 申し訳なくて……代わりにと言っちゃなんだけど貰ってほしいの」


 確かに、わたしは井戸川さんのライブ配信でアイテムを使った。

 でも、見返りを求めるためにしたわけではなかった……。


 ってか、この前、自分で「いどっちじゃない」って言ってたのに。それじゃ認めてるも同然だよ!

 なんか、かわいい!


「……そんなつもりでアイテムを使ったわけじゃないのに」


 本心を口にする。


「いいの。貰ってほしいの」


 井戸川さんは、断固として譲らない。


「それに……空き教室で吉瀬さんのことを嫌いって言ったの。その……ごめんなさい」


 彼女は頭を下げる。


 わたしは戸惑う。完全に自分の中で解決したことだったから慌ててしまう。


「別にいいよ! わたしもあの時は、ごめんね」


 わたしが好きと言ったら、井戸川さんは顔が真っ赤になっていた。だからこそ、気にしてはいなかった。

 

 目の前にはスタバのギフトがある。井戸川さんからのせっかくのプレゼントだ。

 このまま断るのはかえって申し訳ない気がする。


「スタバのギフトやっぱり貰ってもいい?」


 素直に受け取ることにした。


「うん」


「ありがとう。……でも、アイテムを投げたのは純粋にいどっちの配信が良かったからだよ!」


「ちょ、その名前で呼ばないで」


 周りをキョロキョロ見ながら忠告する。頬もほんのりと赤い。


 ……かわいい!


「ねぇ。いどっちだよね?」


 意地悪心が顔を出す。わたしの悪い癖だ。

 井戸川さんがたじろぐ。


「へへーん。もう顔出し配信してるから、隠すなんて無駄だよ!」


 少しでも明るい雰囲気にするために、茶化してみせる。

 だけど彼女はそっぽを向いた。


 まずかったかな。


「確かに、私が、いどっちだけど……」


 井戸川さんは途切れ途切れながらも言葉を紡ぐ。どうやら観念したようだ。


「やっぱり。いどっち〜!」


「その名前! 現実で言われるとムズムズするから言わないで!」


 ビシッと指をさされる。


「えー! そういうもの? わたしはライライちゃんって呼ばれても平気だよ!」


 にっこり笑うと、井戸川さんはため息をついた。


「それは吉瀬さんが特殊なだけよ。普通はネットの名前をリアルで呼ばれると落ち着かないものよ」


「……」


「昔から配信している吉瀬さんにはわからないかもしれないけど……」


「えっ。何でそんなこと知っているの!?」


 井戸川さんは、しまったという顔をした。

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